第121話 待った甲斐があった
「冗談はよしてくれよ……。今のお前は神聖などかけらもない、どちらかと言えば神は神でも邪神の方に成り下がった世界の敵だと言われた方がまだしっくりくるわ。むしろ、今現在お前がやっている事は邪神そのものではないか」
「は? 何を言い出すかと思えば俺が世界の敵である邪神だと……? 俺はむしろ世界の浄化の為に不要な命を殺して周っている、まさにこの世界にとっての救世主である俺に向かって……っ!! 前々から俺はお前の事が気に喰わないと思っていたんだが、こうして再開してやっぱりお前の事を殺したいくらいに気に喰わないし心の底から嫌いだとはっきりしたぞっ!!」
「そりゃどうも……」
とりあえず俺は思った事をそのままダニエルへと伝えると、激昂しながら救世主だのなんだのと宣うではないか。
関係ない人々を大量に殺しておいて、その言い草は流石に肯定する事はできないのだが、だからと言って彼の価値観を変える事もできるとは思わないので、適当に流す事にする。
「それと、そこにいるのはマリアンヌか?」
そんなダニエルは、マリアンヌの存在に気付いたのかゆっくりとマリアンヌの方へと近づいて行くではないか。
「こんなに痩せてしまって……。あの時俺に犯されなかった事が、それほどまでにショックだったんだな……。だが、今の俺はそんなものよりも気持ちよく幸福になれるものを見つけたんだ。どうだ? お前もその気持ちよくて幸福になれる事をしてみないか? それはいたって簡単だ。目の前にある命を奪う事さっ!! ただそれだけで、まるで自分が神になったかのような万能感すら感じる事ができるんだよっ!! これは凄い発見だと思わないかっ!! 相手の命を俺の一存で殺す事も生かす事もできる……まさに神の所業ではないかっ!! 特に人間の命を奪う時が最高に気持ちがいいんだよこれがっ!!」
「…………あっ……」
そしてダニエルは、マリアンヌに向かって一緒になって無差別に殺戮をしようと誘うのだが、あまりの恐怖から、マリアンヌはまともに返事すらできなくなってしまっている。
しかしながらダニエルは、そんな事にすら気付けていないのか尚も語り続ける。
「そして、俺はここ数日間はずっと人間を殺す事を我慢していたんだよっ!! ここエルフェイムのギルドマスターを殺してその秘書から『ルーカスがここへ来る』という情報を得たからなっ!! いちいちルーカスを殺す為に探す手間が省けたというものだよっ!! だが、待っている間に人間を殺したい衝動が日に日に強くなってな、この街にすむエルフを殆ど殺し尽くしてしまったんだが、実際にルーカスが来たと言う事は待った甲斐があったという事だなっ!!」
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