第120話 人間を辞めたのか?
そして俺たちは外壁の中にあるエルフェイムへ入る為に関所がある門構えの入口へと向かうのだが、その時点で既に分かる位の違和感を覚えていた。
普通、大国の首都へと入る関所であれば居るはずの種族関係なく商人や旅人といった人たちが全く見えないのである。
この不自然さを疑問に思いながら進んで行くと、違和感の正体が分かった。
今俺の目の前にはウッドグリーン王国の住人であろうエルフたちや、その他種族たちの遺体が転がっているではないか。
それはまさに無差別に殺されているといっても過言ではないだろう。
今までの話であれば、ダニエルは悪事をしているような裏で生きる者達やスラム街に住む者達という、一応彼の中で最低限の一線は引いて殺戮を繰り返していた事が窺えてくるのだが、どうやらダニエルはその一線すら引く事できないくらいに魔剣に乗っ取られているのだろう。
その事からも、ダニエルの持っている魔剣はゲームで一人の魔族を狂わせた呪いの魔剣【ティルフィング】である事は間違いないだろう。
まったく……落ちるところまで落ちたと言わざるを得ないというか、これではまさに魔王そのものではないか……。
いったい何故こんな事になったのか、何が彼をあそこまで変えてしまったのか、そのきっかけに俺が絡んでいる事は、理解はしているのだが、それはあくまでもきっかけに過ぎないと思っている。
しかしながらいくら考えたところで俺はダニエルではないので分からない事は分からない為考える事を止めて先に進む事にする。
こういう答えが無く、そして暗い内容の問題を考え始めるとそちら側へ引き込まれてしまうので、分からないものはいくら考えてお分からないと切る事がメンタル的にも必要だと思っている。
「よぉ……遅かったな」
そして、そんな事を思って歩いていると道の真ん中で突っ立っている男性が俺に聞き馴染みのある声で話しかけてくる。
「…………人間を辞めたのか?」
その姿はとてもではないが人間とは言えるようなものではなく、宇宙からの侵略者と言われた方がまだしっくりくるような、グロテスクかつ両生類感もあり、しかしながら人間っぽさも残したような姿をしていた。
「あ? この姿を見て第一声が『人間を辞めたのか?』だと? この俺、ダニエル様を舐めているのか? どっからどう見ても神に一歩近づいた神聖な姿に対して……」
しかし、ダニエルは今の自分の姿を見て気持ち悪いなどとは思っていないようで、むしろ神聖な姿になったと本気で思っているようである。
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