第117話 口が裂けても言えない


「さぁ、どうだろうな」

「あんな、ぶっ壊れた剣を持っているくらいですもの。今更ドラゴンの一匹や二匹、召喚獣として使役していたとしても今更驚きませんわ」


 そんな会話をしながら俺たちは歩きながら門の方へと歩きながら外へ出ると、道の横へと外れ、通行人の邪魔にならない程のスペースが空いている場所へと移動すると早速召喚獣を召喚する。


「では、ここでグダっていても時間の無駄だから早速召喚するか」


 そして俺がそう言いながら真っ黒な鱗で覆われた、身の丈七メートル(全長十一メートル)程の巨躯を持つドラゴンを召喚する。

 

「…………はい?」

「…………へ?」


 そのドラゴンを目にしたアイシャとマリアンヌは、そのあまりのカッコよさに言葉を失っているようである。


 その姿を見て俺は、初めてこのドラゴン【黒炎竜ニーズヘッグ】のイラストを見た時は『借金をしてでも当ててやる』と鼻息あらく息巻いた程である。


 イラストでこれなのだから実際にその姿をその目で見た場合は、やはり言葉を失ってしまうのも分かるというものである。


「我が主よ、良くぞあのいけ好かない豆腐野郎ではなく私を選んでくれた。それで、我は何をすればよい? 目の前に見える羽虫の街を漆黒の炎で燃やし尽くせば良いか?」

「やめろ。とりあえず、ニーズヘッグにこれから俺たちをエルフの国まで飛んで行って欲しいんだが、頼めるか?」

「なるほど、そのエルフの国を焼き尽くせば良いのだなっ!!」


 なんでこいつはとりあえず焼き尽くそうとするのか……。


 周囲の人たちがニーズヘッグを見て怯え初めているので早くこの場から飛び去りたいのだが、俺の命令が伝わっていそうで伝わっておらず、こんな事ならばニーズヘッグが『豆腐』と呼んでいるは【白銀竜ホワイト・ローズ・ドラゴン】または【紅涙竜レッド・ローズ・ドラゴン】を召喚すれば良かったと思った事を隠して俺は『ただ目的の場所まで運んでくれるだけでいい』と丁寧に教えてやると何故か不服そうな表情をするではないか。


「ふーむ……せっかく呼ばれたのだからいつものように暴れまわれると思っておったのだが、どうやら思い過ごしであったようだな。少しばかり物足りないと思わなくもないが、主が使役しているドラゴンの中から唯一、我を選んでくれたというだけでも良しとしよう」


 しかしニーズヘッグは直ぐに機嫌を取り直して俺たちが背中に乗りやすいように伏せの状態で待機してくれる。


 あのカッコいいニーズヘッグが犬のように伏せをして俺たちが背中に乗るのを待っている姿は、見たくなかったとは口が裂けても言えない。

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