第116話 ドラゴンくらいしか思いつかないですわ


 その後捨てられた子犬みたいな表情をギルドマスターにされても気持ち悪いだけだし、万が一その役目が欲しいと思っていてもゴリマッチョオジサンよりも美人秘書を選ぶわ。


 というか、どうせ今ここで仕事をサボったところで、やらなかった仕事が消えて無くなる訳ではないので結局未来の自分が全て背負う羽目になるというのに……。


 なので、こんなオッサンは無視して俺はギルドを後にする。


「ねぇ、今からエルフの国、ウッドグリーン王国へ行くつもりかしら?」

「あぁ、そうだが……それがどうかしたか?」

「どうもこうもありませんわ。今は既にお昼時、今から出発したら馬車の場合次野営できる場所まで日が暮れてしまいましてよ? はやる気持ちはわたくしも同じですので分かりますが、翌日早朝でもよろしいのではなくて?」

「私もそう思うわね」


 そして早速帝都の外へと出る門へと行こうとすると、アイシャとマリアンヌから待ったがかかってしまう。


「そうか……。いや、先に俺が説明しておくべきだったな。実はエルフの国までは召喚獣に乗って行こうかと思っている。当然馬車なんかよりも早く、そうだな……ここからならば三時間ほどでウッドグリーン王国の首都であるエルフェイムには着くと思うぞ?」


 その理由に移動時間の事を指摘されるのだが、俺は彼女たちに移動手段の説明をする事を忘れていたのを思い出したので、俺の召喚獣で移動する事を説明する。


「ちなみに召喚獣は、ギルドで登録は済ましているのかしら?」

「あぁ、自分の領地であるタリム領にてちゃんと召喚獣の登録とその証明の首輪も貰っているから安心しろ」

「それならば良いのですが、その召喚獣というのは……?」

「そうだな、それは門の外に出るまでのお楽しみという事で」


 当然その召喚獣は既に登録は済ましている、というか俺の召喚獣は全て登録している。


 ギルドで直接登録すると色々と面倒事になりそうなので俺の屋敷までタリム領のギルド職員を呼び寄せて一気に済ます事にした。


 その時のギルド職員の驚いた表情は今も覚えている程の表情をしていたのを思い出す。


「……勿体ぶる理由が分からないけれども、遅かれ早かれ分かるので別に良いわ」


 そんな俺の態度に少しばかりイラっとしたのか、アイシャが面白くなさそうな表情でそう呟く。


「しかし、帝都からウッドグリーン王国の首都、エルフェイムまで三時間程度でわたくしたちを運ぶことができる生物なんておりますの? それこそドラゴンくらいしか思いつかないですわ」

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