第113話 人としての尊厳に当たる部分
当然こうして話している間も十一本もの剣で攻撃し続けている訳で、アイシャは防御に徹することしか出来ず、たまらず距離を取る為にその場から離れようとする。
「逃がさないよ? 戦略的撤退とかではなく、ただ単に固められるのを嫌がって後退する者に待っている未来は画面端での固めであり、更に自分を追い詰める事になるというのに……」
当然、ゲーム時代の武器である以上好きなように刀を動かせる訳ではなく一定の決められた動作内で選択して動かす事になるのだが、どんな組み合わせで攻撃しても必ず隙ができるようになっている。
そこをストーリークリア後にできる対人戦では読み合うのだが、アイシャは読み合う以前に考える事を放棄して逃げる選択しか考えていなかったようである。
おそらくアイシャレベルであればちゃんとファンネルの攻撃を見ていればパターン化されている事に気付く事はできただろうに……。その点から見てもアイシャは心が折れかけているのだろう。
弱気になってしまっているのが伝わってくる。
「ぐぅ……っ!」
「流石にしぶといな……」
「ぎゃうっ!?」
なのでここが攻め時であると思った俺は二つ目の武器スキル【氷銃】を低出力(一般的な銃(オートマチック・ピストル)と同じレベルの威力)で氷の弾丸を放ち、アイシャの左腕へと命中する。
ちなみにこの武器スキル【氷銃】の普段行使する威力はこの世界のドラゴンの鱗ですら余裕で貫通する(実証済み)威力であるが、それ程の威力をだしてしまうとアイシャの身体では耐えきれないであろうし、万が一何らかの方法で耐えきったとしても追加効果までは防ぐことはできず、一瞬にして氷の中に閉じ込められてしまう事だろう。
「な、何なのこれっ!? 攻撃を受けた個所から腕が凍っていくわっ!?」
しかしながら威力を落としからと言って追加がまでも無くなる訳ではないので、落とした威力に見合った追加効果がアイシャの身体を蝕んでいるようである。
「その氷は俺が生み出した氷の剣同様に打撃では破壊されず炎ですら解けず、全身を氷で覆いつくすまでお前の身体を蝕んでいくだろうな」
「ひぃ……っ!? お願いっ! 謝るから解いてっ!! この氷を解いてよっ!! 私はまだ死にたくないのっ!!」
そしてじわじわと迫りくる目に見える程の死ほど怖いものは無いだろう。ついにアイシャの心がぽっきりと折れ、肥大したプライドは粉々に砕け散ったようである。
アイシャはその場にへたり込み、泣きながら俺へと懇願して来るのだが、漏らしてはいけない黄色い体液も漏らしてしまっているのはプライドとかではなく人としての尊厳に当たる部分である為見なかった事にするか……。
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