第111話 俺とアイシャとの違い


「そ……そんな……っ」


 そして氷の龍が俺の斬撃で砕け散る光景を、アイシャは呆然と眺めながら突っ立っているではないか。


「そんな蛇でこの俺をどうにかできると思っているのか? そもそも、武器スキルを使うのは良いがその後攻撃を追撃するわけでもなく、ただ突っ立っているとは……がっかりだな、ハッキリ言って。どうせ今までその武器スキルを使えば大抵の相手は一撃で屠る事ができ、そうでなくとも致命傷を与える事ができたのだろうが、その力は所詮武器の力であり、言い換えれば『自分の力では勝てない相手には武器の力でどうにかしてきた』その事からも、それで手にした地位、冒険者ランクSSS級も、対価も、全てがお前そのもの評価ではなく武器の評価だったという訳だろうな」


 まぁ、それを言うとゲームの能力を引き継いでいるだけの俺も他人の事は言えないのかも知れないのだが、それでも今俺が持っている力とそれを扱う為の知識に立ち回り方はゲーム内とはいえ俺が努力して得た俺の血肉である事には変わりない。


 ただ、俺とアイシャとの違いがあるのだとすれば同じレベル、または自分よりも強い相手に巡り合う事が今までなかったという違いだけだろうとは思う。


 俺も武器スキルを使うだけで相手に勝てるのであれば立ち回りやコンボ、有利・不利の対面、それこそフレーム単位で調べたりなどしなかっただろうし、アイシャと同じように武器スキルを行使するだけのbоtみたいな戦い方になってしまっていただろう。


 でも俺はこれだけで終わらすつもりは無いし、アイシャの心が折れるまでしっかりと分からせるまではやるつもりである。


「ふ、ふざけないでください……。この私が血反吐を吐きながら武の道以外を捨ててまで手にしたSSS級冒険者という地位を……私の力を示した評価ではなく武器の力を示した評価ですって……っ? その言葉、絶対に後悔させてあげましょう」


 そして、自身が追撃する必要も無いと棒立ちするほどの信頼を置いている武器スキルを目の前で簡単に切り砕かれたのを見たにも関わらず、アイシャはまるで『武器スキルを使わなくても俺に勝てる』というような言葉を吐いて俺を睨みつけるではないか。


 何か他に手札を隠し持っているのかとほんの少しだけ注意して相対するのだが、結局アイシャは縮地か何かを使っての瞬間移動を使って俺へと一気に距離を詰めて来るだけなので、同じようにタイミングを合わせて蹴り技を入れる。


「かかったわね。この私が何の対策も無く同じように攻める訳がないわ」

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