第109話 完全上位互換


 とりあえず、アイシャの使っている武器は【氷の竜牙】であり、ゲーム内のレア度はBである。


 そして特殊スキルは周囲温度を下げ、寒さに弱い相手の動きを鈍く、寒さに強い相手の動きは鋭くなるという特殊スキルに加えて、斬撃には固定ダメージの他に氷属性のダメージが付与される。


 勿論属性ダメージである為、氷属性が苦手な相手にはダメージは倍増し、逆に氷属性の相手には回復させてしまうというメリットとデメリットが一緒になっている剣である。


 しかしながら、それでもこの世界では破格の武器である事は間違いないのだが、その武器の性能に胡坐をかかず、ちゃんとデメリットがある事を理解しているからこその、腰に別途予備の剣を帯剣しているのだろう。


 その事からもアイシャはその傲慢な態度に見合った努力もしてきたのだろう。


 しかしながら、それ故に勿体ないと思ってしまう。


 このレベルまで上り詰める事ができるだけの努力をしてきた結果、相手をまず見下す事から入り、そのせいで視野が狭くなり、見えるものも見えなくなってしまっているのだろう。


 だからこそゲームではブラックスライムへ単独討伐を、そしてこの世界ではDランクというだけで相手を見下して俺に噛みついてしまったのだろう。


「後悔しても知りませんからね……。それこそ、凍傷で指先が腐ってしまい、二度と剣が仕えなくなってしまっても、それは自業自得。己の見る目の無さと傲慢な態度、そして肥大したプライドを恨む事ですね」


 そして、俺に煽られたアイシャは怒りの感情のまま愛剣である【氷の竜牙】のスキル能力を使い、ただでさえ肌寒い修練場の温度を氷点下まで下げ始める。


「くだらない」

「……今なんと?」

「くだらないと言ったんだよ。そもそも今お前が偉そうにして行使している力はお前の力ではなくてその剣の力だろう? そんな、剣の力をまるで自分の力であるかのように振舞うのもくだらなければ、それで勝った気でいるのもくだらない」


 そういうと俺はアイシャが持っている剣と同じ系統・・・・の剣をストレージから取り出す。


「な……何ですか……っ!? その剣はっ!!」


 腐ってもSSS級冒険者。俺の取り出した剣を見ただけで、この剣のヤバさを肌で感じ取ったのだろう。


「この剣はデメトリアという剣だな。言っても分からないだろうが、この剣は冬を担うギリシャの女神の名前を付けられているだけあってレア度はURであり、当然レベルもカンストした上で限界突破もしている一振りだ。分かりやすく言うとお前の持っている剣の完全上位互換というやつだ」

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