第108話 かかって来いよ。三下
その魔剣は、ゲームで何度も見てきたアイシャの愛剣であり、その剣を見ただけで俺のファン心が激しく脈打つ。
正直なところこんな決闘とかいうくだらない茶番なんかよりも、このアイシャの愛剣を三時間ほど眺めたり触ったりして堪能したいところである。
「良い剣だな……」
「あら、一応貴方は見る目だけはあるようですね。しかしながら相手の強さまでは正確に測る事ができる目を持てるくらいには修行が足りなかったようですが、今日私がその身体に『自分の力で周囲が見えなくなり、過信した結果』というやつを叩きこんであげますので感謝してほしいわね」
「そりゃどうも」
なら、そんな無駄口を叩く前に俺を潰せば良いだろうとは思うものの口にしない。
結局こういう奴は、それを言った所で聞きやしないし、こういう無防備な所を狙って倒したところで後から卑怯だなんだといちゃもんつけるというのは火を見るよりも明らかだろう。
正直それでは勝ててもストレスが溜まり、決闘をした意味も無ければ勝った意味もなく、例え彼女をパーティーに入れて行動したとしても道中のストレスは半端ない事になるだろう。
であれば、真正面からアイシャをぶっ潰し、ゲーム同様に彼女のプライドを粉々に砕く方法が一番俺の精神上安定した未来を過ごす事ができるだろう。
しかしながらゲームではアイシャのプライドを粉々に砕く役目がブラックスライムである為、どうせならゲームと同じようにブラックスライムにプライドを粉々に砕かれてから会いたかったと思ってしまう。
「良いでしょう。この剣の価値を少なからず理解している貴方には特別にこの剣だけが持つ特殊スキルで倒して差し上げましょう」
俺が運命によって損な立ち回りを押し付けられている現状に嘆いていると、アイシャはそんな俺に気付くことなくノリノリで愛剣の能力を披露してくれると言うではないか。
そして、闘技場の温度が明らかに、急激に下がって来ているのが分かる。
「あら、ここまで温度を下げても平気そうですね。ですがやせ我慢は身体に悪いと思いますが?」
「いや、自分の魔力で周囲の温度を快適な温度で固定しているだけだ」
「まぁ、そういう事にしといてあげましょう」
「あのさ、無駄話は良いからさっさとかかって来いよ。三下」
「…………あ?」
しかしながら喋るばかりで一向に攻撃してくる気配がないので流石に待つのも飽きてきた俺はアイシャを軽く煽ってやると、見て分かる位かアイシャの顔が真っ赤に染まり、小刻みに震えだすではないか。
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