第102話 気持ちが痛い程良く分かる


「こいつが、身の程も知らない冒険者ランクがD級のバカ貴族……という事で良いのでしょうか?」


 そしてアイシャはまるで周囲を凍り付かせそうなほどの冷めた視線を俺に向けながら、かなり失礼な事をギルドマスターへ確認するではないか。


「そ、そうだけど、そうじゃないというか……とにかく、貴族であるルーカス様相手に言ってはいけない言葉があるだろう……っ?」


 そんなアイシャの態度にギルドマスターは、お腹辺りを抑え、脂汗をかきつつも何とかフォローを入れてくれるではないか。


 きっと今のギルドマスターはストレスとプレッシャーで腹痛を感じているのだろう。


 俺も前世で似たような状況、ストレスとプレッシャーで胃に穴が空き入院した事があるので、今のギルドマスターの気持ちが痛い程良く分かる。


「ほう、ギルドマスターも落ちたものですね。こんな、冒険者ランクDというバカ貴族に対して『相手は帝国の爵位を持っているから』という理由だけでペコペコと……。それとも何かしら? コイツがギルドに多額の寄付をしてくれているとでもいうのでしょうか。だとしてもここ冒険者ギルドであり、強いものが権力を持つというのに、恥ずかしくないのかしら?」


 そんな、今にも胃に穴が空きそうになっているギルドマスターに容赦なく思った事をずけずけと言い放つ。


「ほう、強い者が権力を持つ……ね。であればお前は俺よりも弱いのだから、それ相応の態度を取ってもらおうか?」

「……いいだろう。今から修練場に行って分からせてあげましょうか?」

「そうだな。自分は俺よりも弱いと気付けていないのであれば、その事が分かる事ができる良い案だな」


 まぁ、ゲーム通りの性格であれば、こういう展開だよな……。


 しかしながら初対面にもかかわらず開口一番そんな失礼な事を言ってコイツはどの道ボコるつもりでいたので相手から修練場へ誘ってくれるのであれば、わざわざこちらから誘う手間が省けたというものである。


「……言っておきますけど、ここの筋肉だるまのせいで理解できていないとは思いますが、ここ冒険者ギルドでは貴族だからといって他の場所同様にぺこぺこと低姿勢で相手をしてくれると思ったら大間違いだという事だけは教えてあげましょう。そもそも冒険者ギルドは帝国に所属していないので、冒険者ギルド内は帝国の法律など通用せず、適用されるのは己の強さのみであるという事だけは言っておきます」

「ご忠告、どうも。ではお礼に俺からも一つ……。人を肩書や見た目で判断したら痛い目見るぞ?」

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