第101話 ヒロインの一人
「あぁ、今ちょうど一人いるんだが……ちょっと愛想が無いというか、無礼な態度をルーカス様にとってしまっても怒らないでくれればありがたいんですが……」
そしてなんとなくギルドマスターがこの話を避けていた理由が分かってきた気がする。
どうやら今ここ帝都のギルドにいるSSS級冒険者が性格に難がある者しかいない為、俺と鉢合わせて無礼な行為をしてしまう可能性を考え、そのリスクを回避しようとしていたのだろう。
「でもまぁ冒険者という者たちはそういう世界で生きてきただろうし、生い立ちもあるだろうから多少の無礼には目を瞑るさ」
なので俺はギルドマスターを安心させるために多少の無礼であれば目を瞑るというのだが、それでもギルドマスターは安心したようには見えない。
まさか、多少どころの話ではない……というのだろうか?
むしろギルドマスターが全くもって信頼していない事が伝わってくる程の者が、いったいどんな者であるのか逆に気になってきた。
「……そんなにか?」
「……そんなにです」
「なるほど……逆に気になってきたな。 今ここに呼ぶことは出来るのか? 実際に合ってみて一緒にパーティーを組むか、調教して性格をまともに改造……正してからパーティーを組めば良いか選べばいいだろう」
「……わ、分かった。一応連れてきますが、怒りの矛先をこっちに向けないでくださいよ?」
「分かっている。だから早く連れてくれば良い」
そして、しぶしぶといった感じでギルドマスターはその問題児をここへ連れて来てくれるようだ。
ギルドマスターはその問題児と俺を鉢合わせたくという気持ちも分かるのだが、最終的にはギルドマスター同様に力でねじ伏せれば問題ないだろう。
どんなに生意気であろうともギルドマスター同様に『絶対に勝てない』『こいつには絶対に逆らってはいけない』というのを分からせてあげれば良いだけである。
「では、そいつを呼んでくるので少しこの部屋で待っていてください……っ」
そう言ってギルドマスターはこの部屋から出て行くと、十分ほどで戻って来る。
「…………は?」
そうして連れてきたのは、腰まで伸びた青みがかった銀髪に、まるで俺を値踏みしつつも見下すつり上がった目に、大きな胸……。
その姿はRPGゲーム『暁の夜明け』のストーリー中に仲間になるヒロインの一人である氷の女帝という二つ名を持つアイシャ・コンラッドではないか。
何故俺は気付く事ができなかったのか。
マリアンヌがここへ来た時点でアイシャもまた俺の元へ合流する可能性はかなり高かったはずであり、そしてこの出会いは気付いていたら避ける事ができた筈である。
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