第98話 溜めやすい
まだ完全に覚醒、自我を失った訳ではなさそうなのだが、それでも『同族の魂を喰わせる事が、一番効率がいい』という事に気付いている可能性は、今のダニエルの行動から見てあるだろう。
恐らく同族殺しの方がより
という訳で俺はドゥーナ及びマリアンヌたちと一緒に帝都の冒険者ギルドへと来ていた。
本当は俺一人、ないしドゥーナと行く予定でありマリアンヌは体力的にも同行は無理だろうとタリム領で療養させるつもりであった。
しかしながらマリアンヌはダニエルの暴走を止められなかった事に負い目を感じてしまっているようで、自分もついて行くときかなかった。
正直、本気で駄々こねる大人(とはいうもののマリアンヌはまだ十代なのだが)ほど面倒くさいモノはそうそうない無いと思ってしまう程には精神的に疲れ、最終的には根負けした感じでマリアンヌの同行を了承する事を承諾する事になった。
子供であれば本人が納得していなかったとしても別の欲求を満たしてあげて話題から逸らしたり、我慢をさせたり、最悪力業(使用人たちにがっちりとホールドしてもらう)などで俺の家に押しとどめる事が可能であるのだが、歳を取った分覚悟を決めた者は別の欲求で釣る事は難しく、マリアンヌほどの実力者であれば使用人を使い力業で止めようとしても、逆に力業で突破されてしまうどころか使用人たちにまで被害を及ぶ可能性もあるのだ。
そしてあの時のマリアンヌの目は間違いなく、使用人たちに怪我をさせてでも抜け出して追いかける事も厭わない目をしていた。
そんな人間を残していく方が後々面倒事になる気がするので、全て自己責任であるというのを口酸っぱく言い聞かせた上で結局連れてきたのである。
それに、ある意味では俺の目が届く場所がマリアンヌにとって安全である可能性があると思ったからというのもある。
「それで、ダニエルが少し前までに居たであろう場所は分かるか? ギルドマスター」
「そ、そうですね……。前回ここの山奥の村が一つ、何者かによって皆殺しにされているのをたまたま通りかかった商人に護衛として雇われていた冒険者から報告が来ていたため、調査団を送ったところ、殺された方々の切り傷などからほぼ間違いなくダニエルであると思われております」
久しぶりに帝都のギルドに訪れた時は始めてきた時と違いギルドマスターがすっ飛んできて、前回の無礼を今一度謝罪し、終始低姿勢で対応してくれているので、ある意味でこのギルドマスターには素直に尊敬する。
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