第96話 魔王化


 その結果歪んでしまった展開の帳尻合わせが『ダニエルの魔王化』だったのであろう。


 そして俺は今の状態に引っかかるところがあったので、もう少しだけ思考を深く巡らせる。


「いやいや……そんなまさか……」


 しかしながら、できればこの展開は外れて欲しいとは思うもののどの角度で見てもそうとしか思えないのである。


「どうしたんだ? 旦那様」

「あぁ、すまん。少し考え事をしていてな。大丈夫だ、問題ない」

「それならばいいのだが……」


 そして、俺の頭の中で描いた仮説を認めたくなくて現実逃避していると、そんな俺を見てドゥーナが心配そうに声をかけてくれるので問題ないと返しておく。


 しかしながら俺は、自分がたどり着いた答えに、背中が汗をかいて止まらないわけで。


「し、しかし顔色が悪いですわよ? あれでしたらわたくしが回復魔術を施してあげましてよ? これでも、腐っても聖女と呼ばれた実力は健在でしてよ?」

「マリアンヌもありがとう、その気持ちだけ受け取っておくよ。本当に大丈夫だから」

「そ、そうですの……。無理だけはしないでくださいましね?」


 そんな俺の顔はやはり悪いようで、ドゥーナに続きマリアンヌが心配して回復魔術を行使してくれると言うのだが、体調が悪いのではなく精神的な事なので意味が無い為感謝の言葉を述べつつも断る。


 そもそも、何故ドゥーナが俺のところに嫁ぎに来た事に対して疑問に思わなかったのか。


 恐らく、シナリオという物があるのであればこの時点で変更していたのであろう。


 ヒロイン候補の一人であるドゥーナを娶るのはゲームの主人公、言い方を変えるのであれば魔王を倒す駒であると考えれば、同じくヒロイン候補であるマリアンヌが俺の所まで押しかけて来るのは辻褄が合う。


 そして、殺され役が主人公へと裏返ったのだとしたら、元主人公であったダニエルに死亡フラグが立った。


 だからこそダニエルに魔剣が渡り、魔王という駒に堕ちたという事なのだろうが、だからと言って俺の死亡フラグが全て消えて無くなった訳でもないだろう。


 故に、俺がダニエルを討伐するのは正に命がけであると言える訳で……。


 一言で言い表すのであれば『面倒くさい』という事である。


「なぁドゥーナ、そしてマリアンヌ」

「何だ? 改まって……」

「あら? わたくしを妾にしたいとでも申しますのかしら?」

「いや、それは無い」

「なっ……!!」


 とりあえずマリアンヌが煩いので黙るように指摘して仕切りなおす。


「お前たち二人はダニエルの事を救いたいか? この場合は魔剣から救う事でありダニエル本人がやらかした悪行に関しては別問題なのだが……」

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