第94話 という事らしい


「それで、マリアンヌがわざわざ俺の元を訪れた理由を教えてくれないか? ただ飯を食いに来た事が理由じゃないんだろう?」


 そして、使用人が料理を運んでくる間に話の本題をマリアンヌに投げかける。


「あ、当たり前ですわっ!! …………とは強く言えない今のわたくしが情けないですわね……。わたくしが来た理由なのですけれども、ダニエルの身に起きた事と変化を聞いて欲しいんですの。わたくしは一応勘当される前に一度両親に対してダニエルの身に起こった異変を話してみたのですけれども『お前に男を見る目が無かっただけだろう。お前と違ってルーカスに乗り換えたドゥーナと違ってなっ!!』と怒鳴り散らして会話になりませんでしたわ……」


 そしてマリアンヌはぽつりぽつりと俺が学園でダニエルを倒した時からの出来事を話してくれる。


 その内容は、要約すると──


●謎の老婆からダニエルは魔剣を譲ってもらったとの事。

●その魔剣を手にしてからダニエルは今まで隠していた本性を隠す事をしなくなった。

●それだけではなく、日に日にダニエルは魔物を殺したがるようになっていった事。

●最終的にマリアンヌや学友に対して暴行をし、その後姿をくらましていた事。

●そしてダニエルは魔族を殺すだけではなく、帝国のスラム街に住む者達までも殺すようになっていた事。

●しかしダニエルは、性格だけは難があったとはいえあそこまで酷いものではなかった事。

●そもそも平民上がり故に良く『スラム街に住む者達にも暮らしやすい世の中にする事』だと夢を語っていた事。

●そんなダニエルが、いくら性格に難があると言えども魔族は勿論のことスラム街に住む者達までも殺す事は考えられない事。


──という事らしい。


 女性の話は長いというが、マリアンヌがこれを全て説明し終えるのに、卵雑炊を食べながらとはいえ二時間以上はかかった。


 ちなみに話が長くなった理由は、マリアンヌの身に降りかかった身の上話が八割を占めていたからである。


 その身の上話は両親から勘当された事や、好意を信じたら襲われそうになったこと、何も考えずに持ち金を使って生活していたら一か月も持たなかった事、その為働こうと思い行動に移すのだがどこも使えないと罵倒されて三日として続かなかった事などなど、基本的にはどうでも良い事で占められていたので、最終的に俺が『マリアンヌが伝えたかった重要な点だけ』を箇条書きで紙に纏めておいた感じである。


 道中の苦労話は今夜ドゥーナにでも話してスッキリしてもらえば良いだろう

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