第92話 マリアンヌの反応も理解できる


 そう言いながらマリアンヌの視線は私のお腹を見つめている。


「確かに私なんかが母に成るだなんて、少し前までは思いもよらなかったからな……。人生どうなるか分からないものだ」

「……本当に……そうですわね」


 マリアンヌは私の言葉に、まるで自分に言い聞かせるようにつぶやく。


 そして私たちは二人で数十分ほど語り合うのであった。



◆主人公side





 ドゥーナとマリアンヌがお風呂から出てきたようなので早速食堂のテーブルへと料理を並べていく。


 とはいっても俺たちは既に食事は済ましているし、マリアンヌのやせ細っている体型からしてあまり食事は取れていないであろう事から、簡易かつお腹に優しい卵雑炊と、温めたミルク程度なのだが。


 そして俺とドゥーナの分は温めたお茶と、何か摘まめる漬物などを何種類か用意する。


 ちなみに、ここ帝国は海に面した領地があるにも関わらず海藻などを食料として利用していなかったので、手始めに俺の領地と提携して昆布や海苔等の流通を始めているところである。


 そのお陰で地味に前世でも好きだったきゅうりの浅漬けが美味しく食べられるようになった事は嬉しかったりする。


「あら、本当に料理を用意してくださいましたのね……」

「そんな事をするような人物に俺が見えて……いや、確かに学生時代の俺を知っているマリアンヌならばそう思われても仕方がないな……」


 そして、ドゥーナに案内されて食堂へと来たマリアンヌはテーブルに置かれた料理を見て少し驚いているようである。


 しかしながら、確かに学園時代の俺は自分から見ても最低なクズ男と思える程にはクズなのでマリアンヌの反応も理解できる。


「ち、違いましてよっ!! た、確かに学生時代の貴方は最低だとは思っておりましたが、それと同等に今から思えばあの頃のわたくしも貴方に対しては最低な事をしておりましたもの……。そんな最低な事をしてきたわたくしに施しをしてくださった事に少しばかり驚いただけで、ルーカスを疑ったとかそういう事ではございませんわっ!!」

「確かに、お互いに色々とあったからな……」


 そんな俺の返答にマリアンヌは『自分は学生時代俺に対して酷い事をしてきたから』と、俺がクズだからとかではないと否定する。


 それを考慮しても俺のクズさには敵わないと思うけどな、とは思うものの、ここでそんな無意味な事を言い合う意味は無いので否定はせずこの話を終わらす。 


「まぁ、とりあえずこの話は一旦置いといて……質素かもしれないがマリアンヌの体調を考えてお腹に優しい料理にしてみた。俺から出された料理を食べるのは嫌かもしれないが、美味い事は保証しよう」


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