第88話 むしろ感謝されていたであろう
しかし、今は満足しているからといって強くなる事をサボってしまってはルーカスにその分近づける日が遅くなる訳で。
そんな事、耐えられる訳がないだろう。
一日でも早くルーカスの奴を殺したくて仕方がないというのに、それが一日であろうとも遅れるなど我慢できる訳がない。
さて、どうしたものか……。
このまま魔族を再度殺しに行っても良いんだが、行動しにくくなるのはそれはそれで面倒だ。
ルーカスにすら勝てない今の俺が魔王やS級冒険者に必ず勝てるとも思わないので、であれば危ない橋をわざわざ渡るべきではないだろう。
賭けるのは自分の命であるのだから猶更である。
魔剣を制御する事ができずに魔族を殺してしまった事は、自分の不甲斐なさも含めて後悔はしているが、魔剣が満足するまで生き血を吸わせなければまた制御できなくなるかもしれないという不安もある。
ちなみにこの賊に関してはS級武具が厄介なだけの雑魚であると以前ギルドの依頼内で目に入ってから、いつか討伐してやろうと調査していたので狩に来たわけである。
だからこそ悩む。
恐らくまたギルドに行っていい感じの殺しても良い『人間』を探し出そうとしても間違いなくギルド職員には正体がバレてしまうだろうし、万が一バレなかったとしてもギルドカードを、みせれば終わりだろう……。
「あぁ、そうか……殺しても良い人間イコール悪い奴らだと思うから難しいんだ……っ。別に悪さをしている人間以外にも殺しても良い人間はいるじゃぁないかっ!! しかもゴロゴロとっ!! 更に雑魚しかいないから相手の強さをいちいち警戒する必要のない帝国に、いや全ての国々に住まうノミやダニのような奴らがっ!!」
どうして今までこんな単純な事に気付けなかったのだろうか?
確かに強い奴と戦うよりかは経験を積むことはできないかもしれないが、それでも魔剣に血を吸わせて強化させる事によって、魔剣によるステータス上昇値が上がり、間接的ではあるものの結果俺の強さも上がるという訳である。
ちなみにこの様々な国に住まうノミやダニのような奴ら、それはスラム街に住む者達やホームレスなどといった者達の事である。
俺が魔族に追われるようになった原因をつまるところ魔族を殺したからではなく『殺してはいけない者を殺してしまった』からであり、逆に悪人を含めて殺す事により市民にとってメリットに繋がる者達であったのならばこんな事にはならず、むしろ感謝されていたであろう。
何故あの時にこんな簡単な事に気付けなかったのか、今更ながら悔やまれる。
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