第86話 魔剣の養分にする為


「あっそ。 結局お前はその程度だったという事か。 その程度ならば今から俺がこの賊の頭で良いだろう?」


 そう魔族殺しのダニエルがほざくので、言い返そうとした次の瞬間『どちゃり』と何かが床に落ちた音がするではないか。


 嫌な予感がした俺は、ダニエルに言い返す前に音の正体を確認するべく床を見てみると、俺の右腕が床に転がっていた。


「…………は?」

「結局この程度の斬撃すら反応できない時点でテメーが俺に勝てる訳がないんだよ。 どうせS級の武具か何かを持っているからこそそんな偉そうな態度を取っているんだろうが、所詮武具は武具でしかない。 その武具を使う者もまた武に秀でた者でなければ宝の持ち腐れだという事だ」

「……ひぃっ!!」


 そしてなんの躊躇いも無く俺の腕を切り落としたダニエルはゆっくりと俺に近づいて来る。


 魔族殺しだのなんだのと言われてはいるが、どうせ不意打ちで殺したかか弱いものを殺したかだろうと思い、はっきり言って俺はダニエルを舐めていた。


 しかし、俺の腕を切り落とした実力からしても白昼堂々魔族を殺してまくったという魔族側の主張は正しいのだろう。


 その事に今更気付いてももう遅いわけで、本来ならば初めからダニエルの事を俺と対等の存在として対応していればこんな事にはならなかったはずである。


「す、すまなかった……俺が間違っていたっ! 俺が持っている組織のトップもお前に譲るっ! 当然S級の武具もだっ!! 武具はS級の防具とそれにA級のペンダントがあるっ!! それらも全てお前にやるっ!! だから命だけは取らないでくれっ!!」


 高ランク級武具を手放すのは惜しいが、それで殺されないのであれば安いものだろう。


 生きてさえいればどうにでもなるし、この俺をここまでコケにしやがったダニエルにいずれ復讐をする事だってできる。


 今はぐっと我慢して耐えしのぐ事が正解だろう。


「ふーん、良いね。分かってんじゃん。俺良い武器はあるけど良い防具とか持ってなかったんだよな……」

「じゃ、じゃぁ…………っ」


 そして、俺が武具とペンダントをダニエルに渡すと、ダニエルは嬉しそうにそれらを受け取る。

 

 その姿を見て何とか今は生きながらえる事ができたと、ホッと胸を撫で下ろしたその瞬間、ダニエルが持っていた剣が俺の胸に突き刺されているではないか。


「な……………何故っ!?」

「なぜ? そもそも俺がお前に会いに来たのは仲間になる為でも組織を乗っ取る為でもないんだよ。ちょうど皆殺しにしても良い人間を探しだしてこの魔剣の養分にする為に決まってるだろう?」

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