第83話 ダニエルそのもの
◆勇者side
俺はどうして今こんな事をしているのだろうか?
魔剣を手に入れてまで強さを求め、魔獣や魔物を殺しまくり魔剣へ捧げる日々の繰り返しである。
確かにあの老婆の言う通り、この魔剣を手にすると信じられない速度で一気に強くなった事はたしかであるし、そこからの成長スピードも目を見張るものがある。
だが、俺が力を得れば得る程魔剣が血を欲するようになり、最近では弱い魔獣では満足しないのか討伐ランクB級以上でなければ魔剣からの血の要求が収まらなくなってきている。
ここ最近では起きている時と食事の時以外はずっと魔獣や魔物を狩り続けてやっと何とか魔剣を鎮める事ができるほどだ。
これでは何のために強さを求めたのか意味が分からない。
更に酷いのが、魔獣や魔物よりも人の血の方が、魔剣が静まりやすいという事である。
そして、ここ最近では魔剣の要求によって人を殺したいと思っているのか、俺自身が人を殺したいと思っているのかが分からなくなって来た。
こんな事になるのならば魔剣など手にするんじゃなかったと後悔するも後の祭りである。
帝国内に居れば俺はいずれ近い将来人を殺すだろう。
だから俺は魔王を倒しに行くことにした。
ここ最近魔王の動きがきな臭いという噂を良く耳にしていたので、恐らく人族側へ戦争を仕掛けるつもりではないのかという推測がされているのだが、俺からすればどっちでもいい。
魔族と人族などそもそも相いれない存在である以上、お互いに手と手を取りあって平和な関係を等と言っている者は頭がお花畑なのだろう。
そんなもの、魔族を根絶やしにすればそんな問題など無くなると言うのに。
人間を殺したいという欲求と魔族に脅かされる事が無くなる、まさに一石二鳥ではないか。
きっと楽しいだろうな……。
逃げ惑う魔族を一方的に嬲り殺すのは。
それも子供など弱い存在であれば尚良い。
ダニエルが魔族の住む国へ行った数か月後、魔族側から『人族が我が停戦協定を破った』という抗議と、それ相応の賠償が無ければ人族側へ攻め込む旨の報せが各国へ告げられるのであった。
◆ 主人公side
せっかくタリム領が軌道に乗り始めたというのに、魔族と人族の間で再び大規模な戦争が起きるのではないかと危惧され始め、ここタリム領の領民もかなりピリついていた。
ちなみに魔族側の主張は某青年の身柄を生きた状態で渡す事と、多額の賠償金を魔族側に支払わなければ人族へ攻め込むというものであった。
そしてその青年を帝国は賞金をかけて探し出しているのだが、魔族側が提供した映像魔球に映し出された人物が、どっからどう見てもダニエルそのものではないか……。
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