第82話 幸せな未来
基本的にはそんな感じで、前世でいう所の中学生または老夫婦のようなデートをしているのだが、今日に限ってドゥーナが朝からそわそわと落ち着きがないのが少しばかり気になる。
その落ち着きの無さの原因は直ぐに分かった。
少ししてからドゥーナがまるで死地へ行く事を決意したかのような表情になったかと思うと、次の瞬間には『俺との間に子供が欲しい』というではないか。
これはこれで本心からであるのは間違いないだろうが、それが『貴族の務めとして』であるのならば断わろうと思っていた。
そうであるのならば無理に子供を産む必要は無いし、なんなら教会から孤児を養子として迎え入れても良いと思っていた。
その為一応ドゥーナに『なぜ俺との間に子供が欲しいのか』といのを確認すると、きっぱりと貴族の務めではなくて一人の女性として愛する異性との子供が欲しいと言われてしまうではないか。
正直な話しドゥーナのような美人に好意を寄せられていると分かってからは毎日我慢の日々であったのは間違いない。
俺も一人の男性である。
ドゥーナの容姿や性格は自分の好みであり、そんなドゥーナと夫婦でもあるのだからそういう行為を求めても良いのでは? という感情が無かったと言えば嘘になる。
しかしながらそれはそれこれはこれである。
今のドゥーナの現状ではまだ心に傷を負っており、そういう行為は精神的に負担になってしまう可能性がある、または前世でいうところのまだ高校生程の年齢である為そういう行為に興味があっても子を成すという事まで想像できていない可能性だってあるのだ。
そう思ったら一歩踏み出せない自分がいた。
前世の年齢も足すと三十を超えるオッサンが、責任から逃げて、決定権を十代の女性であるドゥーナに託す。なんと情けない事か。
しかしながらこればっかりは相手の同意がなければ絶対にやってはいけない行為であるの間違いないので線引きが難しいわけで。
そんな事を考えている自分自身に対しても嫌悪感を抱いてしまっていた。
「分かった。だが、本当に嫌だと思った時は遠慮せずに言ってほしい」
「いう訳がないだろうっ!! むしろ旦那様の了承を得られたのならば今すぐにでもっ!!」
そんなうじうじとしている自分と違い、こうと決めたら竹を割ったような性格をしているドゥーナを見て、何だかんだで俺たちは馬が合っており『良い夫婦になれそうだな……』と、ドゥーナの尻に敷かれつつも何だかんだ幸せな未来を想像するのであった。
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