第80話 旦那様との子供が欲しい
しかしながら、だからといっていざ夜這いをやろうとしてもそれを実行に移すだけの勇気があるかどうかは別問題である。
そんな感じで結局堂々巡りに陥ってしまうのだが、今ここでうじうじと悩んで、もし旦那様が二番目の妻を娶った時、旦那様が二番目の妻ばかり可愛がって、そして二番目の妻との間に子供を作って幸せな家庭を築くのを見て、あの時恥ずかしいからと一歩踏み出せなかった事を一生後悔するくらいならば、今一瞬の恥で済むと考えれば夜這いするべきだという事くらいは私も理解している。
理解しているのだけれども、やっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいわけで……。
「どうした? ドゥーナ。なんかそわそわしているみたいだけど、他にやりたい事とか行きたい場所とかあれば遠慮せずに言ってくれて良いぞ? 俺ができる事であれば、常識の範囲内であれば何でもするぞ?」
そんな私を見て旦那様が心配そうに優しく聞いてくる。
その優しさが私は嬉しく思うのだが、そこいつもならば満足してしまっていた。
しかしながら、今の私はそんな優しい旦那様を誰にも渡したくないと強く思ってしまった。
「あの……、その……、わたくしの我が儘を聞いてもらえないだろうか?」
「なんだ? 一応聞いてみるから話してみな?」
「その……旦那様との子供が欲しいんだが……?」
そう言った瞬間、私は自分で何を言ったのか理解した瞬間に顔が真っ赤になってしまうのが分かる。
「え……? 子供……? 俺と……?」
そしてやはりというか何というか旦那様も急に子供が欲しいと言われてビックリしているようで、穴があったら入りたい程に恥ずかしい。
そもそも夜這いの許可を得るつもりだったのが、何でこんな事になってしまったのか……。
いや、夜這いは夜這いで同じような事なので恥ずかしさは一緒なのか……? とも思ったのだが、やはりそういう行為をしたいというのと違い、そこから更に飛躍してからの子供が欲しいという訳で……。
というか夜這いをすると宣言した時点でそれは夜這いではないのではなかろうか?
もう色々とやってしまった事に気付いてももう後の祭りである。
「すまん、今から俺が確認する内容で気を悪くしたのならば先に謝って置く。……それは、貴族の妻の務めを果たさないといけないという責任感から来たものか?」
「ち、違うぞっ!! 私は貴族の務めだとかそういうのではなく、旦那様との間に子供が欲しいと思っているっ!!」
そして旦那様が私に対して『貴族の務めで子供が欲しいのか?』と聞かれたので、売り言葉に買い言葉で否定してしまう。
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