第76話 少しばかり心苦しく思う
そしてダニエルの雰囲気が急に変わるとわたくしを犯すと言うではないか。
「そ、そんな事をしてただで済むと思っているのかしら……っ」
「だからここにいる目撃者全員殺すんだろう? 証拠が無ければいくらでも言い訳できるからな。それこそ、このクマ型の魔獣に殺されたとかな」
「…………最低っ!」
そしてわたくしは流石に相手にできないと、下山しようとした瞬間、わたくしの頬を石の礫が掠り、擦り切れた頬から血が滲み出るではないか。
どうやらダニエルが土魔術をわたくしに向かって行使していたようである。
「誰が帰って良いと言った?」
「ダニエル、流石にやり過ぎだっ!!」
「いくら何でも仲間に攻撃するのは違反行為だぞっ!!」
「お、落ち着いてくださいっ!!」
流石にダニエルの先ほどの行動は他のパーティーメンバーも看過できなかったのか、三人がわたくしを守るように前でダニエルと向かい合う。
「…………いいねぇ。わざわざ俺の手間を省く為に一か所に集まってくれて、すまないなぁっ!!」
「それでも四分の一ですわっ!! むしろダニエルの方が不利なのではなくてっ?」
「あ? 雑魚が調子乗ってんじゃねぇぞ?」
そして、こちらは四人に対してダニエルは一人なのでいくらダニエルが強いからといってこちらが不利になる事は無いだろう。
そう思っていたのだが、次の瞬間にはわたくしの意識は途切れ、意識を取り戻した時にはダニエルの姿は無かった。
「それで、ダニエルさんの姿がなかったと……」
「は、はい……」
わたくしは今、後からやって来た学園の学生に助けを求め、何とか下山し、現在保健室のベッドで安静にしつつ担任の先生へ何があったか説明をしていた。
ちなみにわたくしの身体が弄ばれてはいなかったようで、その点に関しては一安心である。
「なるほど、一応この件に関しては他の教員で情報を共有しておくとして、学園長も居なくなってしまったのでどこまでフォローできるか分からないのですが……」
「いえ、そう言っていただけるだけでわたくしとしては有り難いですわ。ですが流石にこんな事になってしまっては、実家の方が一度帰って来いとうるさいので、一度休学するかもしれません」
恐らくダニエルはルーカスを倒せる程の力を得る為に姿をくらましてしまったのだろう。
わたくしがその要因の一つだと思うと少しばかり心苦しく思うのであった。
◆
帝都内のとある居酒屋の地下で犯罪集団のリーダーをしている俺は、部下が持って来ていたシノギの金額の低さに苛立っていた。
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