第75話 ここ最近ずっと考えていた
そして、あれほど手に入れたいと思っていたダニエルが、今はただ『鬱陶しい』と『できる事ならば面倒事にならずに離れたい』と思ってしまっているわたくしがいる訳で。
ダニエルが変わった訳ではない。
そもそもダニエルが自分の欲望に忠実であることはわたくしも理解しており、それでなおダニエルが欲しいと思ったのだから。
では何が変わったのか。
それは『ダニエルよりも強い男性が現れた』事により『わたくしの中でダニエルの価値が一番ではなくなった』だけである。
なのでダニエルが悪い訳ではないし、むしろ悪いのは心移りしたわたくしのせいだと頭では理解しているものの、それでもダニエルの事を鬱陶しいと、なんなら今わたくしが不愉快な感情になってしまっているのも全てダニエルのせいだと、全てダニエルが悪いと思い込み始めているわたくしがいる訳で……。
そんなわたくしのドロッとした部分をこれ以上見たくない、心の奥底の見えない部分に押し込んでおきたいと思うからこそわたくしは『それも込みで』ダニエルとの関係を切る事を選んだのである。
それも込みというのは『ダニエルとの関係を切る言い訳ならばいくらでも思いつく』というだけである。
そんなわたくしが嫌で仕方がないし見たくもない、見るだけでストレスになり頭がおかしくなりそうだ。
もしルーカスの実力を知る前であれば、今のダニエルの実力に興奮していただろう事が容易に想像できてしまうのも、自分の人間性が透けて見えて嫌になる。
聖女だなんだと良い気になっており、自分の本質すら見抜けず『自分は聖女に相応しい人間なんだ』と疑いもしなかったのだから笑えてくる。
そんなんだからルーカスの本質も見抜く事ができなかったのであろう。
「分かった……。もういい……」
「分かってくださいましたの?」
そして、ダニエルはわたくしの言葉を受け入れてくれたみたいでホッとする。
正直もっと粘着してくるかと思っていたので意外ではあるのだが、本人が『分かった』と言っているのでわたくしもそうする事にする。
とりあえずは他の者達と下山だろう。
実習をクリアする事よりもまずは自身の安全第一である。
今までダニエルの、パーティーの体力を無視した無茶苦茶な進行により、限界に近い者も中にはいるだろう。
「だったらここでマリアンヌを犯して、目撃者は殺す」
「……え?」
「そもそも、俺はここ最近ずっと考えていたんだ。こんな学園に卒業までいて何になるのかって。無駄に時間を消費するだけではないかって。噂によると魔王も復活する予兆が見えているらしいし……こんなところで油を売っても良いのかって……っ」
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