第72話 イライラする
「ちょっと、ダニエルっ! もう少しゆっくり進みませんか? 一緒にパーティーを組んでるクラスメイト達もダニエルに追いつくだけで精一杯で、魔物や獣に注意を向ける余裕すらございませんわっ!!」
「あ? そんな事この俺に言うなよっ! 俺について来る事ができない弱い奴が悪いんだろうがっ! 何が特進クラスだよっ! 雑魚ばかりじゃねぇかっ!!」
今俺は実習の授業として学園が所有する山の山頂にあるアイテムを取って学園へと戻ってくるという課題の最中であり、今俺が抱いている苛立ちを現れる魔獣たちを片っ端から切り刻む事によって発散しているのだが、そんな俺に対してマリアンヌが『一緒に組んでいるクラスメイト達の事も考えて欲しい』などとふざけた事をぬかして来るではないか。
「し、しかし……」
「そもそも特進クラスであるのならば俺がいなくてもどうにかなるだろうっ? だったらお前たちはお前たちで無理に俺へ合わせる事をせずにゆっくりと進めば良いだろうがっ!! だいたいこんな身になるとも思えないような授業なんか一刻も早く終わらせて自主練をしたいんだよこっちはっ!!」
イライラする。
アイツに勝てなかった俺も、あれからどれだけ力をつけてもアイツに勝てると思えない事も、俺の足を引っ張るだけのクラスメイトたちも……っ。
「ダ、ダニエル……前………っ!!」
「あ? 前が何だよ……あぁ、こいつは良いストレス解消ができそうだぜっ!!」
そしてこんな俺の足を引っ張ることしか出来ない無能たちを置いて先に進もうとしたその時、マリアンヌが恐怖に滲んだ表情で指を刺した方向へ視線を向けると、そこにはあの日俺たちを襲った魔獣がいるではないか。
あの目の傷、忘れもしない。
コイツが現れてから俺の未来が崩れ始めたんだ……。
やっとその借りを返す事ができると思うと、俺は思わず口元がニヤリと歪んでしまう。
「何やっているんですのっ!? ダニエルッ!! 逃げますわよっ!!」
「何を言っているんだ? マリアンヌ。 こんな雑魚で逃げるとか、あの時の俺じゃないんだから逃げる必要なんか無いだろう?」
そして俺はそう言うと、クマ型の魔獣を魔剣で切り刻む。
「しかし、この魔剣を怪しい老婆から譲ってもらった時は騙されたかと思ったが、どうせただで貰ったものだから使って見たら、まさか本当に魔剣だったとは……」
確か老婆が言うにはこの魔剣には何らかのデメリットがあるとの事だが、今のところ俺の身体には何ら異変も何もないので、老婆が忘れたというデメリットなどあってないようなものであろう。
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