第71話 幸せである
しかしながら作物を育てるにあたってやはり肥沃な土地づくりは必要である為、その点でも畜産業にも力を入れていくつもりである。
その糞尿を肥料にするのだが、それだけではなく土、蚕糞、鶏糞、藁、枯草に人の尿を使って火薬を生成していく予定である。
この火薬に関しては出来上がるのに六年かかるのだが、それでも『一般市民が並みの魔術師』と渡り合える戦力を持てるというのはタリム領としてかなりのメリットとなるだろう。
恐らく我々の事を良く思っていない貴族はいるだろうし、肥えた領地に賊が攻め込んでくる可能性もあれば、魔王に関してはダニエルに丸投げ予定ではあるものの万が一討伐失敗という可能性も視野にいれた場合は近い将来必ず必要となるだろう。
ちなみに火薬及び銃器は勿論のこと、我が領地で俺が前世の知識を使って関与したものに携わる領民たちには情報を外に漏らさないように魔術で重い契約を結んでいるので、何かを作っているという情報は漏れるかもしれないがその生成方法は流出する事は無いだろう。
その点に関しては前世と違いスパイや引き抜かれる心配もないのでかなり安心して事業を進めていけるのは有り難いかぎりである。
生成方法ならばいざ知らずせっかく育てた人材を引き抜かれる事は避けたいかぎりである。
「ドゥーナ、今からデートしないか?」
それとは別に、確かに領地改革も重要なのだが、だからと言って俺の元に嫁いで来てくれた妻を蔑ろにして良い訳がないので、俺は近くにいたドゥーナにデートを誘ってみる。
今までドゥーナばかり頑張って俺にアピールして来たので今度は俺から積極的にアピールをしていくつもりである。
その為ならば忙しい中でも頑張って時間を定期的に作るのも苦ではない。
「ほ、本当かっ!? 旦那様っ!! 行くっ! 今すぐ出かける準備をしてくるから少しばかり待っていてくれっ!!」
そして、俺からのデートの誘いに、尻尾をブンブンと左右に振りながら了承してくれるではないか。
やはり変な駆け引きなどせず素直に好意を表してくれるのは、見た目が姉御系美人なのも相まってそのギャップからも見ていて可愛いと思ってしまう。
まぁ隠したところで、尻尾でバレバレなのだがそこもまたドゥーナの良さだろう。
うん、初めは俺の為に始めた領地改革なのだが、今はドゥーナの為にも頑張って領地改革を進めて行こうと思えるくらいには幸せである。
◆
くそくそくそくそくそっ!!
俺のドゥーナを奪いやがったアイツが憎い一心で魔物を狩りまくっているのだが、未だにアイツより強くなれたと思えないのが、腹が立って仕方がない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます