第70話 見ないで欲しい
そして私の尻尾がわさわさと左右に揺れている事も、既に私の感情が旦那様にバレているのならば今更隠す必要もないだろう。
ただ、恥ずかしくないかと聞かれればやっぱり恥ずかしいものは恥ずかしいので、真っ赤になった顔だけは見ないで欲しいなと思うのであった。
◆
とりあえずこれからの方針は固まったのでタリム領は今まで以上に忙しなくなるだろう。
しかしながらこれもタリム領が生まれ変わっているという事でもあるので良い変化である事は間違いないだろう。
とりあえず味噌、醤油、みりん、日本酒はまだ数年はかかるとしても、大会を開始する前に今できるご当地食材なる物を作っておくべきだろう。
今案として出しているのが蕎麦とうどんである。
特に栄養が少ない土地でも育つ蕎麦を本命として押していく予定なので醤油やみりんが今手元にない今、つゆの代用品をどうするかが問題ではあるのだが、とりあえず前世の五島列島を真似て魚醤(ナンプラー)を使った味付けで出すぐらいしか今のところ案は無いのでそれで何とか三か月経てば味噌を、約半年経てば醤油ができるので徐々に移行していく方向で問題はないと思いたい。
しかしながら味噌も醤油もある意味で生き物相手である為万が一の事を想定して蕎麦やうどん以外のご当地新メニューが必要であろう。
よく前世ではこういう場合は柔らかいパンなどがあげられるのだが、この世界では既にあるのでとりあえず、試食会を開いて決める事にする。
案としては餅、団子、煎餅、葛餅、水あめ、あんこ類など江戸時代で嗜まれていたおやつならばこの世界でも作れ、尚且つ低価格で提供できるだろうと選出している。
江戸時代には爆発的な人気を誇り芋成金を多く産んだり飢饉を救ったりした薩摩芋にかんしては帝国には似たような甘い芋は無かったので保留である。
しかしながら芋はある為そこから葛餅や水あめ、豆を甘く煮てあんこ擬きは作れ、粘り気の強い米も隣国にあるにはあるのでそれを栽培すれば餅や団子、煎餅は作れるだろう。
なんならより餅などに適した米や薩摩芋のように甘い芋もここで品種改良をしていけば良いし、品種改良専門のチームを作る予定である。
ちなみにその米で現在日本酒などを作っているところであるが、餅は餅屋という言葉もあるので近いうちにドワーフを勧誘することは決定事項であり、既に何人かに目星をつけている。
いくら前世の知識があるからと言っても、だから作れるというほど簡単な訳ではないのでそこはやはりプロに任せるべきだろうし、醬油や味噌などもランゲージ家が囲い込み職人を育て上げていく予定である。
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