第65話 俺が潰してやろうか?


 そして俺はそう言いながら席から立つと、ギルドマスターは俺にバレていないと思っているのか『やっと面倒くさいクレーマーから解放された』という表情でため息を一つ吐いて遠回しで『さっさと帰れ』という感情が籠った言葉を投げかけてくるではないか。


「あぁ、良くわかったよ。お前らギルドは自分たちのケツも拭けないどころか市民がギルドのケツを拭けと、そうやって今まで対応してきたしこれからもその方針、今の時代に合っていない旧時代の体制を変えるつもりは無いって事をな。一応今回の件は全て録音させてもらったからそれを市民がメディアに売りつけて新聞とラジオで拡散してもらっても問題ないよな? 一応メディアもギルドとグルなのは調べずとも今まで問題として取り上げられていない事からも理解できるのだが公爵家としての権力を振りかざせば余裕だろうよ。ちなみに皇帝陛下にもこの証拠と共に進言するから覚悟しておけよ?」


 なので俺は録音していた球体型の魔道具を懐から取り出すとギルドマスターへ向かってこれから俺が行う事を言う。


 すると、先ほどまで面倒くさい客が来たというギルドマスターの顔から、明らかに怒りの感情が滲み出てくるのが見て分かる。


「どうやってその録音魔道具をこの部屋に持ち込んだ? この部屋に入る時は一応録音されないように身体検査は行っていた筈だが?」

「敵に対して教える訳がないだろバカが」

「…………なるほど。どうやって持ち込んだのかは分からないのだが、それは俺に伝えるべきではなかったな、小僧。もしここで言わなければ、もしかしたら上手く行っていた可能性があったというのに。そんなものを見せられて無傷で返すと思うか?こちとら国に所属していない機関なもんで、貴族の権力とか効力無いんだわ」


 そういうとギルドマスターはミシリと音を立てながらゆっくりとソファーから立ち上がり、俺の顔面へギルドマスターの顔面を近づけ『武力こそ全て』と遠回しに脅してくるではないか。


「……なるほどなるほど。お前たち組織が腐った原因が良く分かった。そもそも国に所属していない機関と言えど店を建てているこの土地は貴族のものであり、金銭を出しているのはこの国の市民であり、帝都の冒険者ギルドへ所属している冒険者は少なくとも半数以上が帝国民出身の冒険者であるにも関わらずその物言い……。しかも分が悪くなると武力行使で強引に相手の言い分を押し曲げようとするその思考回路…………こんな腐っている組織などこの俺が潰してやろうか? なに、心配するな。冒険者ギルドの後釜には俺が新しく帝国が所有する冒険者ギルドを俺主体で作ってやるからよ」

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