第64話 ボロが出ると分かっている
しかしながらギルドマスターはそんな俺のクレームなどどこ吹く風。
淡々と聞き流してやり過ごそうとしているのが見え見えである。
恐らく今まで似たようなクレームを多数捌いて来たのであろうし、ギルドマスターというだけあって身長は二メートルを超え、服の上からでも筋肉という鎧を着こんでいるのが分かるほどの人物であれば、俺のような見た目がひょろい権力だけの貴族など怖くは無いのだろう。
それに、ギルドマスターは元S級冒険者である為、貴族の脅しなどそよ風程度にしか感じないのかもしれない。
「なるほど……冒険者ギルドはあくまでも仕事を斡旋するだけで、冒険者個人の不祥事は知らぬ存ぜぬという訳か?」
「さきほどからそう言っておりますが?」
「ふむ。 しかしながらこのS級冒険者の暴走は明らかに冒険者ギルドのシステムが、戦争や災害級の被害など滅多にない安定した平和が数十年続いている帝国に合っておらず、その歪みで漏れ出た問題だと思うんだが? その歪みを見て見ぬふりをしてきた結果今回の冒険者のような『ギルドの依頼以外で金銭を稼ぐ』という、裏依頼で生計を立てている冒険者、それもS級冒険者も多いと聞きますが? そのツケは市民が払えとでも? 相手はS級冒険者だというのに? 武力で押し切られたら並みの一般市民は泣き寝入りでしょう? それに市民がどうにかできない問題だから腕っぷしに自信がある冒険者へ依頼するのでしょう? それを、問題が起きても冒険者ギルドはその責任を一切責任は負いませんというのはふざけているのでは? そもそもあなた方ギルドサイドがそういうスタンスだから冒険者は市民に対して舐めた態度を取っているのでは? しっかりとペナルティーなり何なり問題行動を起こした冒険者へ与え見せしめにする事で防止に繋がるにも関わらずしない理由は?」
「いやー……そう言われましてもな、こちらはしっかりとそれらを明記しておりますので……ははっ」
そして俺は悪質なクレーマーよろしく一気に捲し立て、冒険者ギルド側の問題点を一気に指摘する。
当然冒険者ギルドも非が冒険者及び冒険者ギルドの体制・対応が今の時代に合っていないという問題がある事は理解している為、言い返せばそこからボロが出ると分かっているのだろう。
質問に対して返答するのではなく曖昧な返事で流そうとするではないか。
「なるほど、お前たちギルドの方針は良く分かった」
「分かっていただけたのならば良かったです。こちらも規則である以上心苦しいのですが無理な物は無理でしてね……ははは」
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