第60話 死ぬまで殴り続けてやろう


 これだから知能の低い猿は困るし、だからこそ躾が必要であるというものだ。


 それに相手が先に暴力をふるって来たのだから正当防衛で殺しても良いだろう。


 死んでしまえば後からいくらでも捏造できるのだから、なんなら暴力を先にふるって来たくせに、さらに決闘まで申し込んで来たとでも言えば、コイツが死んでも俺はお咎めなし、無罪放免だろう。


 馬鹿な奴だ。


 貴族の前にいち人間として年上を、そして生きてきた功績としてついた学園長という肩書に対して敬意を払うのは当然であるにも関わらず、今年で七十歳となる儂よりも三分の一すら生きていないガキが調子に乗りやがって……。


 それに爵位も儂の功績ならば近いうちに公爵まで陞爵していた筈である。


 そんな事すら儂の功績から想像する事すらできない低知能の猿は儂の手でしっかりと殺してやらないとな。


 そして儂は拳鍔を装着してルーカスと相対する。


「この拳鍔はS級武器である。装着したからにはいくらお前とは言え勝てる事はできないだろう。なに、素直に今謝れば今までの狼藉を許してやろう。これが儂からの最後の情けだ」


 嘘である。


 許す訳がない。


 許しを請うた瞬間にその顔面を殴って困惑と涙でぐじゃぐじゃになった顔面へと再度この拳をめり込ませ、死ぬまで殴り続けてやろう。


「…………その武器は……っ」


 そしてルーカスは儂が装着した武器の凄さに気付いたのか、狼狽しているのがその表情からも理解できる。


 あぁ、その表情だけでも気持ちが良いものだな。


「ほう、見ただけでこの武器の凄さが理解できるとは……その点だけは褒めてやろう」

「まさか無料ガチャで手に入るゴミ武器を『僕が持っているS級の最強武器』とか言うんじゃないだろうな? 流石に肩透かしも良いところじゃねぇかよ。恥ずかしくねぇのか? そんなゴミみたいな武器でどうせ今まで威張ってきたんだろう? 俺なら恥ずかしくてそんな真似絶対にできないな」


 しかし、ルーカスの反応は儂の想像とは違っていたらしく、儂が今装着したS級の武器を『ゴミ武器』などと貶して来るではないか。


 流石の儂も我慢の限界が来たので、この武器をバカにしたルーカスに、この武器がどれほど凄い武器であるか見せつけてやることにする。


 馬鹿は口でいくら説明しても分からないからこうして身体に叩き込まないと理解できないから面倒くさいかぎりである。


「せっかくだからこの武器の価値を理解できないルーカスに、どれほど凄いか見せてやろう」

「なら、俺もその同じ武器を鍛え上げた最終ランクとやらを見せてやろう。一応手に入れた武器はゴミであろうとも全て最終ランクまで鍛え上げていてな……」

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