第59話 理解する知能もない


 さて、どうやって狩ってやろうか……。





 あのバカにルーカスの暗殺を依頼してから数日が経った夜。


 儂はルーカスを暗殺したという報告が来ない事に腹を立てていた。


「あのゴミ貴族のクソガキ一人殺すのに何日かかってるんじゃっ!! Sランクと言えども結局は仕事のできないバカではないかっ! だから仕事の依頼も少ないんじゃよっ!! 使えないっ!!」


 せっかく高い依頼料の半分を前払いとして払ってやったのだからちゃんと仕事をしろと、暗殺の達成報告をしてきた時に一言だけでも言ってやらねば気が済まない。


 どうせ先に貰った報酬で飲んだり女遊びしてるんだろう。


 そう考えただけでも腹が立つ。


「むしろ一発殴ってやろうか……。ただ殴るだけでは痛くも痒くもないだろうから、先祖代々伝わる我が家のS級武器である拳鍔を装着してぶん殴ってやろうではないか」

「ほう……その武器がどんなものか教えて貰おうか? もしその武器がゲーム内で入手できるアイテムである可能性もあるからなぁ……。クソジジイ」

「あ……? え? ……は? ル、ルーカス……ッ!? なんで儂の部屋にいるんじゃ……っ!?」


 そして、仕事の遅い冒険者をどのように制裁してやろうか? と悩んでいたその時、誰も入れていない筈の儂の部屋であるにも関わらず儂に声をかけてくる者がいたので恐る恐る振り返ってみると、そこには何故かルーカスがいるではないか。


「あぁ、俺が今この場所にいる事はどうでも良いんだよ。問題は今お前が独り言で言っていた『あのゴミ貴族のクソガキ一人殺すのに何日かかってるんじゃ』って事なんだが、一体誰の事なのか教えてくれないか? なぁ?」

「いや、その……他国の貴族の話しでな、別にルーカス、お前の事ではないぞ? 何か勘違いしているようなのだが、今ならば儂に対しての無礼な態度も合わせて許そうではないか」

「あ? 無礼な態度? 何言ってんだお前」

「い、今まさにルーカスは儂に向かって──」

「俺は公爵でお前は伯爵だろうが? あ? 違うか? 公爵は伯爵よりも立場は低いのか?」

「いや……そういう訳ではなくての……。儂の方が学園長という肩書や年齢──」

「話逸らしてんじゃねぇよ。 あと、お前の言う年齢や肩書は伯爵が公爵よりも立場が上になるとでも言うのか?」

「そ、それは勘違いでぶべはぁっ!!??」

「そう言ってんだろうが。脳みそ腐ってんじゃないのか?」


 そしてルーカスはこの儂に向かって言いがかりをつけてくるのでそれは勘違いであると説明するのだが、それを理解する知能もないのかそのまま殴られてしまうではないか。

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