第54話 危険を冒して得た実績


 結局のところ、ここグラデアス帝国が思っていた以上に平和であるのが今の現状だとは思うのだが、だからと言って戦争を裏でけしかけたり、災害級の魔物を無理やり俺の領地へ定期的に襲うように裏で操るなどという事はしたいとは思わない。


 それに、もしこの燻っている高ランク冒険者たちが本気でSランク冒険者として稼ぎたいと思っているのならば黒の森があるエルフの国であるウッドグリーン王国や死の火山と呼ばれている火竜の住み家にされている火山がある獣人の国である合衆国にでもSランク冒険者として出稼ぎに行けばいいのである。


 それをしないという事は結局の死ぬ可能性があるリスクを極力背負いたくない、けれども地位と名誉と現金は欲しいと思っているからこその歪なのだろうし、安全第一でかつ最大効率の行動を選んできたからこその高ランク冒険者でもあるとも言えよう。


 逆に言えば今仕事を回してもらっているSランク冒険者や冒険者パーティーはそういった危険を冒して得た実績があってこそだろう。


「よし、分かった」

「……何か良い案でも思いついたのか?」

「いや、いくら考えても分からない事が分かったから考える事を俺は放棄する。こういう事が未経験者の素人があれやこれやと考えた所で現場では『そういう事じゃない』『こんなものは無い方がまだマシだ』となる可能性の方が高いしな。ならば下手に動くよりも動かず現状維持の方が百倍マシだろうし、冒険者歴の長い者達が集まるというのならば、やっぱりそのものたちからしっかりと意見を聞き、そしてそのものたちを主体として何が必要で何が不必要であったかを確認してから動いた方が良いだろう。後はトライアンドエラーで改善していけばいい。それに、俺には他の領地には無い秘策もあるしな。それをどう生かすかはやっぱり経験者に聞いた方が確実だろう」


 結局のところ下手な考え休むに似たりという事だろうし、素人が『こうだろう』と想像で動いても良い結果どころかマイナスな結果にしか繋がらないものである。


 それに俺にはダンジョン生成アイテムの他にも課金、無課金、限定等ゲームで得たアイテムがあるのだ。


 これらアイテムをより効率的に使う為にもここは経験者に相談した方が良いだろう。


 問題はそれらアイテムをどうやって手に入れたかという事なのだが、そこは公爵家という肩書で『先祖代々』だとか『領民使ってこそのアイテム』などと言えば納得はするだろう。


 とりあえず今はこれから増えるであろう領民がストレスなく生活を送れる基盤作りの方が、優先度が高いのでこちらを前世の知識も駆使して整えていかなければならないので、その為に一度街の現状を確認する為にドゥーナと共に馬車へと乗り込む。

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