第53話 苦労している
そんな中、仲間で女性ヒーラーであり俺の彼女でもあるアイナが心配そうに無理はしないようにと言ってくる。
しかしながら、だからこそ俺はこの依頼を受ける決心がついたのであった。
◆
「S級冒険者と言えどもピンキリなんだな……」
俺は今ドゥーナからS級冒険者がどのような存在であるかというのを教えて貰っていた。
端的に言うとA級までと違って依頼が一気に減り、常にギルドにある依頼はオリハルコンやアダマンタイトなどの希少アイテムやドラゴンの鱗や牙など希少種の部位などの採取ぐらいしかなく、基本的にそのような依頼はいくらS級冒険者と言えども自殺行為のようなものであるので基本的には塩漬けとなるそうだ。
まぁだからこそ希少であり値段も張るので、俺が金稼ぎの為に正体を隠して出張らなくて良かったと、胸をなでおろす。
そのせいでそれらの価値が暴落してしまった場合に生じる歪の責任が取れるとも思わないしな。
こういう価値のある物は本来の目的の通り武具などに利用する場合は勿論のこと、投資目的や帝国の金貨だけではリスクが高いためリスク分散の為他国の金貨の他に高額な物などで資産を分散している貴族や高ランク冒険者たちも少なくは無いだろう。
希少であるからこそ今のバランスが保たれているのだ。
「なるほど……ある意味でSランクからはフリーランスとして独立するようなものか。それでも下位ランクの依頼を受けることくらい良いのでは?とは思うのだが、そうすると下位ランクの旨味ある依頼が全てSランクに喰われてしまうのか……。だからこそ逆にSランクには成りたくはない者も多く、ある意味でハイエナ行為を行い稼いでいると……」
とりあえず冒険者の為にダンジョンを作る事は自分の中で決定事項ではあるのだがドゥーナの実家ですらこのような状態なのだ。
流石に帝国内にある冒険者としての聖地の一つとして発展させたとして、S級冒険者になりたくないなどというような領地にはしたくは無いので、何かいい案は無いものかと頭を悩ませる。
「そんな現状を打開できる方法が何か無いものかとお父様も良く頭を悩ませて、定期的にSランクだけ参加できる武術大会などを開催していたりしたのだが、結局稼げないSランクしか集まらないという結果でな……」
そしてその問題はドゥーナの親も苦労しているみたいである。
「ふむ、冒険者稼業で領地を盛り上げるのも大変なんだな。だったら今募集している引退または引退間近の冒険者から面接ついでに何か打開策が無いか聞いてみるとするか」
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