第52話 プライドの高いだけの貴族一人
「ふむ……しかしながら確かにたかがプライドの高いだけの貴族一人殺すだけでこの報酬は破格と言えよう。相手の性格がクズで救いようの無い人物であるというのであればギルドの規約違反とえどもこの依頼を受ける価値はあると考える事は理解できる」
「ふぉふぉふぉ、若いのう。まぁ好きなようにやりなされ。老いぼれの百の小言よりも実際に体験した方が学びとなるじゃろうて。ただ、もし今回の裏依頼を遂行した場合は一生今回の件がカルマとして付きまとうじゃろうて。その覚悟があるのならば儂からは何も言うまい」
そして俺は今回の依頼の件をパーティーメンバーへと話す。
勿論俺一人で今回の依頼は行うのでパーティーメンバーに手伝って欲しいとかではないのだが、ただ知らせずに依頼をこなすのは違う気がしたので隠さず話す事にした。
これでこのパーティーを抜けると言うのであれば引き留めるつもりは無い。
パーティーメンバーとはいえ各々譲れない物の一つや二つはあるだろうし、だからこそ皆Sランクにまで上り詰めた帝国最強のパーティーとして成り上がる事ができたのだと思っている。
それでも、もしかしたら全力で止められるかもしれないし、罵声を浴びせられるかもしれないと思っていたのだが、蓋を開けてみたらどちらかと言えば皆肯定的というか、むしろ俺の事を心配しているようで少しばかり拍子抜けしてしまった。
「みんな、ありがとう。今回の依頼が成功したらその報酬で俺たちに相応しい武具を買いそろえよう。これで俺たちはSランクから本当の英雄になれる……っ!!」
結局Sランクと言えども討伐依頼が無ければ無一文であり、そんなSランク冒険者へ依頼するような危機的状況など一年に数回有るか無いか程度でしかない。
更に言えば既に依頼主は贔屓にしているSランク冒険者または冒険者パーティーが存在しており、ギルドへの依頼は指名依頼が殆どである。
ちなみにAランクの時に贔屓にしてくれていた依頼主たちの殆どはSランクに上がる事で指名依頼が倍以上に上がる為別のAランク冒険者へと鞍替えする。
その為思っている以上にあまり稼げていないというのが現状であり、稼ぐことができなければ自分の実力にあった武具を揃える事も難しいなどは良くある話である。
中にはそれらを見越した上であえてAランクにとどまっている者達も少なくないし、実際にはその方が実入りは良いだろう。
「別に、Sランクになる事を決めたのはパーティー全員の判断で決めた事だからリーダーのオリバー一人が責任を感じる必要は無いわよ? 私たちも現状は覚悟していたし、だからこそ急がずにゆっくりと私に依頼してくれるクライアントを探していけば良いと思うのだけれど?」
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