第44話 猫を被る必要も無い
ドゥーナはそう言うと一度言葉を止め、俺に対して怒りが籠った目で睨みつけてくるではないか。
「だが私の旦那様であるルーカスの事をこれ以上悪く言うのであれば、もう貴様とはこうして会って話す事も無いだろう」
そして何を言うかと思えば、俺に助けを請うのではなく、まさかルーカスを庇うような内容ではないか。
「おいドゥーナ、調子にのってんじゃねぇぞ? 痛い思いをしたくないのならば今すぐに土下座して俺の靴を舐めろ」
そのドゥーナの言いように流石の俺も猫を被る事ができず、マリアンヌには聞こえない程の声で思わずブチ切れてしまう。
他の女生徒たちならばいざ知らず、ルーカスのお古となった女相手に猫を被る必要も無いだろ。
「……なるほど、それがダニエルの本性という事か。まったく私の周りの男どもはなぜこうも本性を隠す事が上手いのか……。そして、ダニエルへの返事なのだが、何故私が土下座をしなければならぬ? おかしなことを言っている暇があれば少しでも強くなれるように鍛錬でもすればどうだ?」
しかしドゥーナは俺が怒っている事を知っているにも関わらず挑発しながら土下座を断るではないか。
「そうか、そんなに痛い目に合いたいと言うのであれば望み通り痛い目に合わせてやる──」
「おい貴様。俺の妻に何をしようとした?」
そして俺が怒りの感情のままドゥーナの肩を掴もうとしたその時、ルーカスによって俺の手首を掴まれてしまい、ドゥーナの肩を掴むことを止められてしまう。
「ルーカス……。お前レベルの雑魚がこの俺に楯突いた事を、ドゥーナよりも先に後悔させてやろうっ!!」
「雑魚が、俺の妻に暴力行為をしようとしたり、土下座を強要してんじゃねぇぞ? あ?」
「ぶふぅ……っ!?」
流石にあのルーカスからここまでコケにされて相手にしない訳もいかず、ドゥーナへの制裁は後回しにしてまずはルーカスから制裁を加えようと魔術を行使する為に魔力を練ろうとしたその瞬間、俺の腹に穴が空いたのではないかと思ってしまう程の衝撃が襲い、その威力に思わず意識を持って行かれそうになるのだけはなんとか耐える事ができたが、次の瞬間その衝撃はダメージと痛みへ変わり俺へと襲ってくるではないか。
俺は腹に受けた衝撃によるダメージで昼に食べた物を吐き、下半身の前と後ろから出してはいけないものを漏らし、その上我慢できない程の痛みに襲われ、その黄色い液体を漏らして汚れた地面の上をのたうつ事しかできなくなってしまう。
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