第43話 さっさと喰っとけばよかった
そして俺は内心は隠しつつドゥーナへ愛想を振りまきながら話しかける。
これで大体の女性は俺に夢中になるのだが、更にドゥーナの事を気遣って心配するような事を話したのだ。
俺の事が異性として好きなドゥーナからすればルーカスや貴族の妻という肩書を捨てて俺の所へ戻ってくる決心もついた事だろう。
当然今の自分がどのような価値しかないのはドゥーナ自身理解しているからこそルーカスというゴミクズの所へ嫁いだんだろうし、ルーカスも足を失ったドゥーナしか嫁の貰い手が居ないと分かっていたのだろう。
こういう所だけちゃんと自分の価値を理解できているルーカスには腹が立つのだが、そうでなければおそらくドゥーナは性奴隷か良くて娼婦として誰と寝たのかも分からない、病気を貰ってしまったのかも分からないような事になるよりかは、ルーカスに一時的とはいえ拾って貰えた事は感謝するべきだな、と思う。
しかしながらドゥーナは俺の想像の反応とは違い、一友としての反応はしてくれるのだが、そこに以前のような俺を異性として見ている雰囲気や表情などの反応は一切感じ取る事は出来ないではないか。
「そ、そうか……本当に心配しなくても大丈夫なのか? もしあれならば俺がお前をこの地獄から助け出しても良いんだぞ? あれなら今俺がルーカスとかいう屑から助け出しても良い……っ」
しかし、恐らくそれはルーカスが近くにおり、そしてドゥーナ自身の価値が無いに等しいとちゃんと理解しているからこそ『私なんかダニエルには相応しくない』などとでも思っているのだろう。
あの男勝りなドゥーナにも可愛らしい所があるじゃないか。
こんな事ならばさっさと喰っとけばよかった。
しかし俺にはまだ聖女マリアンヌがいるので我慢するとしよう。
「…………今、何と言った?」
「いや、ルーカスとかいうゴミクズから助け出してやるって言ってんだよ……っ!」
しかしながらこの俺がせっかくルーカスとかいうゴミクズから助け出してやると言うのに、それを聞いたドゥーナから笑顔が消え、殺気を俺へ向け始めるではないか。
流石の俺も腹が立ったのだが、ここで怒っては意味がないと、なんとか強引に怒りの感情を押し殺して今一度ドゥーナへ、ルーカスというゴミクズから助けてやると伝えてやる。
「ダニエル…………言って良い事と悪い事が……いや……そっか、うむ。これはある意味で私自身が過去旦那様に対して行ってきた恥ずべき行為でもあるのだな……。その事に気付かせてくれた事は感謝する」
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