第41話 溜飲が下がりスッキリした


 そして学園長は歳のせいなのか何なのか切れやすいようで、ついに唾を飛ばしながら怒鳴り散らして来るではないか。


 こんな頭の悪い奴が学園長をしているというのだからこの帝国立魔術学園もネームバリューだけの張りぼてに成り下がったのだと、思わずため息を吐いてしまう。


 しかしながら俺も言われっぱなしを良しとする訳もなく、言い返す事にする。


「そもそも俺の両親から融資と言って金を貰てきておいて、今まで返金されて無いのだが……今まで融資した額を今ここで耳揃えて全て返して貰っても良いんだが? 返金するつもりが無いのであればそれは融資ではなくて寄付、悪く言えば詐欺師とでも言えば良いか?」

「貴様っ!! この学園に融資した金を返せというのかっ!! この恥知らずがっ!! 痛い目を見なければ分からないような子供だと言うのであれば今ここで儂自ら躾けてやろうぞっ!!」


 なんだろうか? 言い返せる事が無く、しかしながら怒りの感情を抑える事も出来ずに感情のまま怒鳴り散らし、挙句の果てに暴力で自分の意見を押し通そうとするその行為、いったいどちらが子供だろうかと頭を抱えたくなる。


 まぁ、俺の頭を抱えるのではなく学園長の顔をぶん殴るんだが。


 とりあえず俺は学園長が俺に向かって行使しようとしている魔術を水魔術段位二【解術】によって打ち消すと、ゆっくりと立ち上がり学園長に向かって歩き出す。


「おいお前? 今俺に向かって攻撃魔術を、それもまともに喰らえば死んでもおかしくない威力の魔術を行使しようとしやがったな?」

「貴様っ!? 何をやったっ!! これ以上儂を怒らせればただでは済まんぞっ!!」

「ほう? ならばどうなるのかご教授願おうか」


 流石に行使しようといた魔術を打ち消されて俺の強さを改めるのではなく『邪魔をされた』とキレ散らかす目の前の学園長は、最早老害と言っても良い存在だろう。


 そしてそんな学園長の顔面を殴り飛ばそうとしたその時──


「ぐべはぁっ!?」


──ドゥーナが俺の代わりに学園長の顔面をぶん殴っているではないか。


 俺がこの手で殴りたかったというのは確かにあるのだが、ドゥーナにぶん殴られ、吹き飛ばされる学園長を見て溜飲が下がりスッキリしたのも事実であるので一応褒めておくことにする。


「……よくやった、ドゥーナ。 それと、今までランゲージ家が融資してきた額は利子をつけ耳を揃えて一括で返金してもらうから覚悟しておけよクソジジイ」


 そして俺はそう言い残して学園長室を後にする。

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