第37話 バカな女だと思っていた
本当の俺は異性からもてたいし、同性からは羨望の眼差しで見られたいと常に強く思っているような人間である。
だからこそその為であればいくらでも何だって努力をするし、そうして今まで生きてきた。
幸い俺には頭脳魔術剣術武術そのどれもで人並み以上の才能があり、そしてその成長速度も並み以上であった。
その為俺は幼いころから村一番の神童と持て囃されてきた結果、その快感を失いたくないと強く思ったのである。
それに、頭脳魔術剣術武術どのどれもが平民だの貴族だの関係ない、平等に手にすることができる能力であるというのも大きかった。
確かに頭脳や剣術に武術といったものは貴族であれば優秀な家庭教師をつけてもらえたり、魔術に関しては血筋というどうしようもないものもあるのだが、それでも優秀な人材になるかどうかは本人のやる気と才能次第であり、血筋が良いからといってもそれはあくまでも『魔力量が多い子供が産まれやすい』というだけである魔術を行使する才能がなかったり、そもそも魔力量が少ない子供が産まれてくる可能性だってある。
それは頭脳や剣術なども同じであり、逆にいえば平民であろうともそれらの何かしらが優れた者たちが産まれる可能性だってあるのだ。
その者たちが戦争で活躍する事によって英雄というのが産まれる訳である。
そして英雄は決まって平民出身が多いのだが、その理由に分母の多さがあるのだろう。
確かに貴族ではありえない程の低い能力を持っている平民がいるのだが、逆に貴族の中でも太刀打ちできない程の能力を持った平民がいる可能性が高いという訳である。
良くも悪くも貴族は平民と比べて優秀な物が多い、言い換えれば平民よりも平均値が上なだけであり、それだけだ。
確かに、貴族の中でも優れた者が産まれない訳ではないのだが平民の人口と貴族の人口約千五百万人と、その中で貴族は約二百五十家では数が違い過ぎる。
サイコロで一の目を出すのに貴族は六面ダイス、平民は十二面ダイスだったとしても転がすダイスの数が違い過ぎるのである。
そして、その平民という数多のダイスの中でも俺という歴代の英雄すら凌駕するであろう才能を持った俺が産まれたというだけである。
そんな俺ならば間違いなく将来爵位を得る事ができるだろうし、貴族の娘だって娶る事も不可能ではない。
なんなら複数娶ったうえで平民から妾を持っても良いだろう。
その娶る予定であったドゥーナなのだが、足を失ったのならば妾として拾ってやろうと思っていたのに俺の前から消えてしまい、バカな女だと思っていた。
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