第31話 どうしようもなく恥ずかしくなってくる
そして旦那様に関しては路傍の石、いやちょっかいをかけて来る時点でまだ何も喋らない石の方がマシだとさえ思っていたくらいである。
あの時に旦那様の本当の実力に気付いていれば……と今さらながらに悔やんでしまう。
もし気付けていたのならば『旦那様に嫌われているかもしれない』などと悩むことは無かっただろう。
いや、間違いなく嫌われているにも関わらず『かもしれない』などと濁して自分の心を保とうとしている自分自身が嫌になる。
あんな事をしておいて、婚姻を断ることなく受け入れてくれたからといって、好かれている理由にはなりはしないというのに。
旦那様は優しいから私の前では『そうされても仕方ない事をしていたから気にしていない』とは言ってくれてたものの、それに縋ろうとするのは余りにも甘えすぎだろう。変わる努力をしていないにも関わらず旦那様の私に対する感情が変るわけが無い。
しっかりと今の自分を受け入れ、そして旦那様に好かれる努力をしていかない限りは何も変わらないというのに……。
だから式こそまだあげていないとはいえ婚姻関係の間柄であるにも関わらず未だに私は旦那様に夜の相手をされていないのだ。
これが現実ではないか。
そして私はシャワー汚れを落とし、着替えを済ますと旦那様の元へと向かう。
「すまない、待たせたな……っ」
「いや、むしろ他の貴族の女性と比べると早い方だろう。気にするな」
その『他の女性』という言葉に私は様々な推測をしては嫉妬をしてしまう。
なんと醜いのだろうか……。
「あうあうっ!? な、なにをするっ!?」
「他の女って言ったのはあくまでも世間一般的な話しで、耳に入って来た言葉から推測した時間を比べただけだ。だからドゥーナが心配するような事は無い」
そして、私が落ち込んでいる事に旦那様は気付いたらしく、多少乱暴に私の頭を撫でながら心配するなと言ってくれるではないか。
それが嬉しくてたまらないのだが、同時に嫉妬心を抱いていた事を見抜かれた事がどうしようもなく恥ずかしくなってくる。
「……し、心配などしておらんっ!!」
「そうかそうか。なら良かった」
そして照れ隠しで否定するのだが、旦那様は笑いながらそれを軽くあしらうではないか。
本当は、ここで嫉妬していた事を素直に告げる事が出来るような素直な女の子の方が殿方は可愛らしいと思うのだと思うと、すこしだけ旦那様には申し訳なく思うのだが、それでも旦那様は私との婚姻関係を承諾してくれたのだから今はそれで良しとして、これから少しずつ変わっていく努力をすれば良い。
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