第30話 嘘は言ってないのでセーフ
「す、すまない。こういう所が淑女としてダメなのだろうが、やはり見たことない武器や攻撃、魔術にスキルを見るとどうしても抑えられなくてな……。こんな女らしくない女を娶って後悔したのならば婚姻関係を切ってもらってかまわないから……。失った足を治してもらって、更に我が儘を言う程、まだ私は落ちぶれていないからな……」
「いや、ドゥーナのそういう所は普通に俺は(犬っぽくて)好感が持てるから気にするな」
そして俺がスキル【残刃】を教えてやると言うと一瞬だけ嬉しそうな顔をした後に、そんな自分に女性らしくないと自己嫌悪し始めるではないか。
流石に毎回毎回こんな事で自己嫌悪に陥ってはドゥーナは勿論、それをケアする俺も大変なので本音は隠して問題ない事を教えてやる。
嘘は言ってないのでセーフだろう。
するとドゥーナは顔を真っ赤にして俯くのだが、尻尾はちぎれてしまうのではないかと思ってしまうくらいにブンブンと左右に激しく揺れているのが見えるし、実際にブンブンと風切り音も聞こえてくる。
うん、尻尾で感情が駄々洩れな感じが可愛いと再確認できた。
ドゥーナではなくて腹黒聖女マリアンヌを選んでくれたダニエルには感謝しかない。
というか、模擬戦でドゥーナに勝ってからドゥーナの俺を見る目が恋する乙女に変わった気がするのだが気のせいだろうか?
いや、ここで『もしかして俺に惚れているのでは?』と勘違いしてしまうのは童貞の思考なので気のせいで留めておくべきだろう。
「……この後タリム領と他の領地と繋がっている道の整備状況を確認しに行く予定だから、今日の模擬戦はこれで終わりで良いか?」
「あ、あぁ……。かまわない。では私は汚れを落とす為にシャワーを浴びて来るとしよう……っ」
そして俺はこの後道の整備状況を確認しに行く予定だと告げると、ドゥーナは顔を真っ赤にしたまま、汚れを落としにシャワーを浴びに行くと言ってそそくさとこの場から去って行くのであった。
◆
心臓が壊れたのかと思える程に激しく脈打ち、その鼓動音が旦那様に聞こえてしまうのではないかと思うと恥ずかしくて今すぐにでも旦那様の近くから去りたいと思ってしまう。
しかしながらそんな感情とは別に『旦那様の側に居たい』という真逆な感情もあり、自分で自分がどうしたいのか分からなくなってしまう。
ただ言える事は、間違いなく私は旦那様に惚れてしまったという事である。
そもそも私は以前から『結婚するならば私よりも強い異性が良い』と思っており、ダニエルがその最有力候補であった。
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