第28話 高ポイント


 ちなみに足が治ってから今日までの三日間、ドゥーナは治った足の感覚を試していた姿を見ていたのだが、単なる鍛錬であると思っていたが俺との模擬戦に向けた確認も含まれていたのだろう。


「分かった。というか模擬戦くらいならば時間があればいつでも付き合ってやるからそんなにかしこまる必要は無い」

「ほ、本当かっ!?」

「あぁ。約束しよう」


 そして俺は、模擬戦くらいならばいつでも相手をしてやると返すと、ドゥーナは目をキラキラしながら喜ぶではないか。


 そんなドゥーナの尻尾はぶんぶんと風の音が聞こえてきそうな程に左右に揺れ、先ほどまで垂れていた耳はピンと立っている。


 表情や声音だけではなく、尻尾や耳でも感情が分かってしまうところはケモナーの俺からしたらなかなかに高ポイントである。


 しかし、模擬戦で喜ぶ当たりドゥーナはフォング家の血を濃く受け継いでいるのだろう。


 その姿は淑女というよりかは、まさにじゃじゃ馬娘といった感じではあるのだが、人狼というのもあってそれはそれで似合っていると俺は思う。


「では、早速模擬戦をやろうではないかっ!!」


 ウキウキと模擬戦を促すドゥーナを見て、つい最近まで鬱気味だったとは誰も想像できないだろう。


 そんなこんなで朝食を終えた俺はドゥーナによって引っ張られる形で半ば強引に家の裏にある修練場まで連れてこられる。


 そして、ワクワクしているのはドゥーナだけではなく、正直言うと俺自身もドゥーナとの模擬戦が楽しみで仕方がない。


 今まではダンジョンにいた魔物やボスしか相手にしてこなかったので、対人戦、それもゲームの中でも武闘派であるドゥーナとの模擬戦をして、今の俺の戦闘スタイルがどれ程通用するのか楽しみで仕方がない。


「とりあえずハンデとして魔術は使わず、木剣と身体強化のみで相手をするが良いか?」

「そうだな……本音を言えば全力を出した旦那様と戦ってみたいのだが、私はまだそのレベルに達していないと判断したのならば受け入れよう。しかし、直ぐに旦那様の全力を出させてやろう」


 しかしながら流石に全力をだすと一瞬で終わってしまう為ハンデとして魔術を行使しない事をドゥーナへと伝えると、渋々ながらも了承してくれた。


「では、始めようか」

「あぁ、いつでもかまわないぞ? 旦那様」

「なら、お言葉に甘えて……っ」


 そして俺は自身に身体強化をかけたあと、スキル【縮地】を使い、一気にドゥーナの背後へと移動すると、そのまま木剣をドゥーナの横っ腹へ振り抜く。

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