第25話 理解できずに戸惑ってしまう
こんな事を言った理由には、お風呂場の意趣返しの意味もあるだが、俺が安心させようと声をかけると、ドゥーナは何故か悲しそうな、そして縋るような表情を俺に向けて来るではないか。
自分の足が元に戻り、それによって元の生活とまではいかないまでも嫌いな俺の元から去ることができるのである。
にも拘わらずあのような表情をドゥーナがする理由が、俺には理解できずに戸惑ってしまう。
「他に何か気がかりな事があるのか……?」
しかしながらいくら考えても分かる訳もないので、ここは素直にドゥーナへと聞いてみる事にする。
「あの……今まで私が旦那様へしてきた事を考えれば『何を言っているんだ?』と言われるかも知れないのだが…………その…………」
「とりあえず、何を言われても一応は受け入れてやるから言ってみろ」
するとドゥーナが俺の疑問に答えようとしてくれるものの、途中で言葉に詰まってしまった為優しく促してやるのだが何だか『怒らないから何をしたのか言ってみなさい』という、結局言った所で叱る親のような事を言ってしまう。
しかしながら、俺の言葉にドゥーナは安心したのかその表情からは少しだけ緊張感が薄れたような気がする。
そして、実際にドゥーナは緊張感が薄れたのか、再度語り始めてくれる。
「あ、ありがとう。なんで今まで私は旦那様のその内に秘めていた優しさを見抜けなかったのだろうかと悔やんでも悔やみきれないし、今更謝っても受け入れてはくれないだろう事は理解している。私が今まで旦那様に行ってきた行為を考えればそれも仕方のない事だろう。それ故に今私が抱いている不安はあまりにも自分勝手であり、旦那様を困らせる事は重々理解しているつもりだ。だからその事は言わずにいるつもりではあった」
ドゥーナはそこまで言うと深呼吸を一つして、真剣な表情を俺に向けてくる。
「私は、足が治っても旦那様の妻でいたい。こんな私を、例え私の親に騙されたような形になったにせよ嫌な顔せず、拾ってくれ、私の事は嫌っているであるにもかかわらずここにいても良いと、私の居場所を提供してくれた。更にそれだけではなく失った私の足を治す為に国一つ買える程の価値があると言われている伝説のアイテムを危険を冒してまで入手してくれ、そして今使おうとしてくれている。そんな旦那様を支えたい、これからも一緒にいたいと思ってしまっている自分がいるのだ……っ!」
そこまでドゥーナは一気に言うと、不安げな、そして少しだけ期待が入り混じったような表情を俺に向けてくるではないか。
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