第22話 不思議な気分


 そう呟くセバスさんなのだが、私も同意である。


 そもそもセバスさんの言う通りわたしの為だとしたら、止めていたというのに。


 私の足なんかの為に旦那様が危険な目に合うのは、私は嫌だと思ってしまう。


 それに、死なず帰ってこれたとしてもフェニックスの尾を入手できないだけではなく、怪我をして私のように身体の部位を欠損してしまったとなれば本末転倒ではないか。


 もし帰ってきたら、文句の一つでも言ってやろうと、そう思うのであった。

 



 

 結局あれから三日間ダンジョンを周回したのだが、六回しか周回できなかった。


 そこはやはりゲームと現実との違いだろう。


 それでもフェニックスの尾は二つ入手できたので、予備の分も入手できたと考えれば十分だろう。


 流石にこれ以上家を空けるのは、いくら置手紙を置いて来たからと言ってもそろそろ心配してくるだろうしな。


 そう思いながら俺は家へと帰ると、使用人たちが涙を流しながら歓喜の声を上げて俺の元へと駆け寄って来るではないか。


「何事ですか? 先ほどから……ル、ルーカス様ッ!?」


 そしてその騒がしさにセバスが叱りに来たのだろうが、俺を見るなり、セバスもまた鼻水を流しながら駆け寄ってくるではないか。


 まだメイドたちが泣いている姿を見るのは良いのだが、オッサンが鼻水垂らし泣きながら近寄ってくる光景は、できる事ならば見たくはなかったかな。


 それでも俺の事を心配していたが故である事は流石に理解できるので口にはしないが……。


 というか、そもそも俺は使用人たちから多少なりとも嫌われていると思っていたので、こうして出迎えてくれるのはなんだか不思議な気分である。


 もしかしたら俺が死んだら食い扶持が無くなるから不安になっていたとかあるのかもしれない。むしろこれならば使用人たちがここまで歓喜してくれている理由としてしっくりくる。


「奥方様でしたら今現在中庭で義足を使った稽古をしております。呼んできましょうか?」


 そんな中ドゥーナの姿を探していたのをセバスに気付かれ、今は義足を使って稽古している旨を教えてれる。


「いや、いい。わざわざ邪魔をする必要も無いだろう。それよりもこの三日間風呂に入っていないから、これから入浴する」

「……かしこまりました」


 流石に稽古しているところを、俺が帰ってきたというだけで邪魔をするのもどうかと思うし、何よりもこの三日間風呂に入っていなかったのでお風呂に入りたい旨を告げると、俺は脱衣所へと向かう。


 ちなみにこの世界ではクリーンという生活魔術がある為身体は綺麗なのだがこれは気分の問題である。

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