第20話 何故か寂しいと思ってしまう

 ちなみにセバスさんに関しては、まだ私はここタリム領の地理に疎い為案内係として同行の依頼を頼んでみたら快く引き受けてくれた。


 そして私はセバスさんと一緒にタリム領、今私が住んでいるランゲージ家の家がある街を歩きながら見渡すのだが、他の村や街にはまず見たことないほど立派な水路が目に入ってくる。


「この水路、なかなか立派でしょう。 奥方様」

「ええ、そうね。水路の外壁などをみるとまだ完成して新しい水路だとは思うのだが、これほど立派な水路を完成させるのにどれほどの年月を費やしたのだろうか……? それにしては全ての水路の外壁が最近できたばかりのように綺麗に見えるんだが……」


 そして私が水路に見入っていた事にセバスさんが気付いたのか自慢げに水路について話してきたので、この水路を見た時に感じた違和感について聞いてみる。


「そうですね、この水路はルーカス様が三日ほどでタリム領全域に、外壁と共に掘ってしまったのですから全体的に新しく見えてしまうのは当たり前でしょう。一応ルーカス様は『距離が距離なので突貫工事になってしまった為水路の外壁とかちゃんとできていない個所もある』とは言われておられましたが、領民たちと共に水路の最終チェックを一週間かけて全域を行いましたが数か所程度しかなく、その魔術の練度及び魔力量は目を見張るものがございます。それだけではなくタリム領を囲うように水堀を掘り、水魔術を行使されたかと思うと一晩で水を張り巡らせてしまったのです。それこそ宮廷魔術師様よりも実力は上なのではないかと思える程には……」


 するとセバスさんは『この水路は旦那様が三日で、それも外壁も一緒にタリム領全土へと張り巡らせた』のだというではないか。


 しかもタリム領の周囲に水堀を掘り、旦那様自ら水を張ってしまうというではないか。


 いったいどれだけの魔力を秘めていればそのような事ができるか……。むしろそのような事ができる魔術師など宮廷魔術師ですら居ないのではないか?


「それは……皇帝陛下はご存じなのか?」


 もし本当にそれ程の力を持っていたのだとしたら、私たちは学園で文字通り手加減をされていたという事となるのだけれども、隠されていたのは私たちだけなのだろうか?


 もしそうなら何故か寂しいと思ってしまう。


「いえ、この事は皇帝陛下ですら知りません。 ですので、ここで話した私の話は内密にお願いします」


 しかしながら、その事を知らないのは私たちだけではなく皇帝陛下すら知らないのだと知って少しだけホッとする自分がいた。

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