第19話 私が嫌いであったルーカス
しかしながら、何故だか分からないのだがここで初めて旦那様と会えた時、学園で感じていた嫌悪感などはなく、いまのルーカスとなら添い遂げても良いと思えたのだが、何だか不思議な感覚であり、そう思える程の魅力がルーカスにはあった。
それはこの家で働いている使用人たちの表情からも、学園でのルーカスのズレを感じ取る事ができた。
学園でのルーカスは学生から嫌われているのは勿論のこと、教師からも腫れ物にされており、ルーカスには友人一人いなかったしルーカスの事を褒める者もいなかった。
それがこの家では、使用人たちが取るルーカスへの態度は学園とは真逆で、全員がルーカスの事を慕っている、むしろ期待しているような眼差しを向けているのが手に取るように伝わってくるのである。
しかしながらその疑問は直ぐに解ける事ができた。
私は領民から税を絞り上げて贅沢三昧をしているものとばかり思っていたのだが、むしろ真逆の政策を実行しようとしており、そしてルーカス本人は比較的質素な生活をしていたのだ。
なんなら使用人たちの方がルーカスよりも良い生活をしているのではないかと思えるくらいである。
学園では想像すらできなかったこのルーカスの態度の違いに違和感を覚えてしまっていたのだろう。
その、学園と領地とでのルーカスの違いに私は思わず執事をしているセバスさんへ聞いてみたのだが「おそらくルーカス様は両親の目を欺くために演じていたのでしょう。しかしながら両親が死んだ今、欺くために演じる必要が無くなったのではと私は推測しております」という事を教えてくれた。
その事から私は今まで、ルーカスの事をちゃんと見ようとせず、それだけではなく誹謗中傷を口にしてはばかにしてたような態度を取っていた事に気付かされる。
それは正に、私が嫌いであったルーカスのような態度ではないか。
その事に気付いた瞬間、私はルーカスへと謝罪をしに行くのだが「いや、学園の俺の態度だと仕方ないだろ。ドゥーナのせいではないし俺の自業自得だから謝る必要は無い」と返されてしまう。
これでは流石に私の気持ちが収まらないので、せめてプレゼントをしようと思いセバスさんと共にプレゼント選びをする。
勿論、プレゼントに関しては私の気持ちの整理をつける為の自己満足でしかないとは分かっているのだが、しないよりかはマシだろう。
やらない善よりやる偽善である。
ルーカスがこういう一方的な、ルーカスから見て理由のないプレゼントを嫌がるようならば次回からしなければ良い。
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