第16話 発狂しながら転がりたい気分
そしてドゥーナも、俺が何を言っているのか分からないといった表情をしながら話を続ける。
「私は正式にお前……いや、これからは旦那様と呼ばせてもらおう。話は戻すとして、旦那様に娶られてこの領地に来たんだが? ここにちゃんと皇帝陛下からの婚姻許可の返事と印鑑が押された証明書も持って来ている。たしかここに、父上に渡された証明書があった筈だ。まだ見ていないのだが父上が嘘をつくメリットも無いだろうから間違いないとはおもうのだが……」
そうドゥーナが言うと、持参してきた鞄の中から一枚の用紙を取り出し、俺へ渡してくるではないか。
その用紙には確かに俺の領地でドゥーナを療養させるという言葉も入っているのだが、その下に小さく『ついでと言っては何だが娘ドゥーナを娶って欲しい。問題なければ何も書かずにサインだけをして欲しい。問題があればその旨を理由と共に記載してほしい』的な記載されているではないか。
そしてそこには当然の如くファング家当主のサインと印、俺のサインと印、皇帝陛下のサインと玉璽が押されているではないか……。
こ、こんなもの詐欺ではないかっ!! 無効だっ! 無効っ!!
と突っぱねたい衝動に駆られるのだが、文字は小さいながらしっかりと記載されている点と、それだけならばまだいいのだが皇帝陛下のサインと玉璽までしっかりと押されていてはもうどうしようもないだろう……。
正直、頭を掻きむしって床をゴロゴロと発狂しながら転がりたい気分だ。
「…………その、なんだ。私の父親が騙す様な事をしてすまない」
「いや、これも貴族の駆け引きであり、当主になったからにはサインを簡単にしては駄目だという勉強代として受け止めよう……」
ここ最近は領地経営で忙しいなどと言うのは言い訳でしかなく、ちゃんと確認をせずに『今までの手紙のやり取りからしてこのような内容が書かれているだろう』とサインをした俺が悪い訳で、ある種の貴族としての洗礼を受けたという事で納得するしかないだろう。
むしろ『爵位と領地を渡せ』などという最悪のケースではなかっただけマシと言える。
しかしながら、予期していなかったとはいえ、あの人狼のドゥーナが俺の嫁になるとは…………これって主人公に殺されるフラグじゃないよな?
「とりあえず、起きてしまった事をいつまでも考えていても仕方がないだろう。…………ドゥーナの部屋は予め用意してあるからここにいる使用人に案内してもらえ。荷物は俺が持とう」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます