第15話 耳と尻尾は垂れ下がっている

「入れ」

「し、失礼します……っ!」


 そして部屋の扉をノックする音が聞こえたので入るように促すと、松葉杖をつきながら俺の予想通りドゥーナが入室してくる。


 緊張と諦め、そして今まで実家での待遇からなのか学園時代ではピンと立っていた耳と尻尾は垂れ下がっている。


「…………お前はっ」


 そんなドゥーナが俺の顔を見ると一瞬だけ目を見開いた後全てを悟ったような、そして自分の人生がまるで終わったかのような表情をするではないか。


「俺の領地での生活は色々と思う事はあるだろうが、お前の実家での待遇よりかはマシだろう。まぁ、嫌ならば実家に戻っても構わないから好きにすればいい」

「まさか、この私を娶った物好きが誰かと思ったのだが、それがお前だったとはある意味で納得だな。そして、私が嫁ぎにここへと来た以上実家との縁は切れているようなものだ。今さら戻れるはずも無く、今度こそ生きる価値無しと殺されるかもしれない。死ぬよりかはマシと言えば私のような役立たずの傷ものを、どのような理由であれ娶ってくれたお前に失礼なのかもしれないが、それでも私は、許される事ならば生きていきたいと思う。こんな意地汚く、往生際が悪い私を笑うか?」


 そして俺が、ここで療養するか実家に帰るか一応聞いてみるとドゥーナは自虐気味にぽつぽつと話し始めるではないか。


 確かに、武功で成り上がって来たドゥーナの一族からすれば、魔獣一匹倒す事も出来ず、寧ろ足一本を切り落とされた上に教師に助けられたドゥーナが療養先に嫌いな男がいたから帰ってきたなんて言ったら殺しかねないなと、容易に想像ができてしまう。


「そうか、まぁお前がそれで良いなら好きなだけ我が領地にいれば良い……うん?」

「あぁ、そうさせてもらおう」


 そして、先程のドゥーナの話した内容に、どこか引っかかる所があるような気がしてモヤモヤしていると、ドゥーナは俺の領地に留まる旨の返事をした後床に正座し、三つ指をついて頭を下げ始めるではないか。


「お、おいっ!? いきなり頭を下げて何してんだよっ!! そんな事する必要ないからさっさと頭を上げろっ!!」

「不束者ではございますが、これからは妻としてこのドゥーナ、精一杯旦那様を支えて参りますのでどうかよろしくお願いいたします」

「いや、だからそんなん良いからっ!! …………は? 何だって? 妻……? そういやお前さっき嫁ぐだの娶るだの言っていたが……まさか……っ!?」

「…………? 何を言っているんだ?」


 

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