第14話 療養目的
そして私は訳も分からずに家を追い出され、事前に準備されていた馬車に乗せられてそのまま走り出すではないか。
いったいどこの誰が片足を失った私を娶りたいと思ったのか。こんな私を娶った時点でまともではなく、性格も性癖もまともではないだろう。
その事からも私の未来は明るくない事は容易に想像できてしまう。
どうせ年老いた貴族の愛人枠なのだろう。
愛人枠ならばまだ良い方で、奴隷よりも酷い事をされた後にゴミのように捨てられてしまう可能性だって考えられる。
家族の絆だと思っていたのは絆などではなく、ただのアクセサリーでしかなく、そして片足を失った私は勇者のパーティーメンバーからも外されて、たった一度、ほんの一瞬だけ油断しただけで私は全てを失った。
私は何のために今まで生きてきたのだろうか?
そう思うと全てがどうでも良くなって、いっそ死んでやろうかと思ってしまう。なんなら私を娶ったもの好きの首筋を噛み切ってから死んでやる。などと思ってしまう。
そして私は御者に気付かれないように泣き、泣き疲れたのか気が付いたら眠っていたようで、目が覚めると私を娶った相手の家の前であった。
◆
「まったく、手間を取らせやがって……」
そう言いながら俺は書類にサインを書きながら愚痴を言う。
今俺が行っているのは徴収した税金の計算や用途不明の出資等で、両親の時代から遡って横領や無駄遣いがないかチェックをしているところである。
勿論無駄遣いしているような定期的な取引、例えば宝石や絵画に骨董品などを定期的に売りに来る商人との取引は俺の代で定期的に購入するのは止める為呼ばれてなければくる必要が無い旨の手紙を書いたりしているのだが、これだけでもいかに両親が無駄遣いをしていたのかが窺えてくる。
ちなみに要らない宝石や絵画、骨董品などは持っていても邪魔なだけなので既に売り払っている。
下水道と水路は既に掘っており後は不備が無いか使用人及び領民たちのチェック待ちである。
それが終われば川から水を引く予定なのでまだ後数日はかかるだろうが、一般的にかかるであろう日数よりも大幅に短縮できているので、それと比べれば数日など誤差の範囲だろう。
そんな事を考えているとセバスが、ランゲージ家に客人が来た旨を伝えてくるではないか。
ついに来たか……。
正直かなり迷ったのだが、俺はゲーム上で足を失ったドゥーナがどのような環境に身を置く羽目になるのか知っているためドゥーナの父親を通して『療養目的』として俺の領地へドゥーナを預けないか? という旨の手紙のやり取りをしており、もうそろそろドゥーナを乗せた馬車がここタリム領へと着くころである事を思い出す。
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