第13話 私という存在意義

「はぁ、さいですか」


 いや、ゲームだとお前俺の事ぶっ殺しているだろうが……っ!


 そうツッコミたい衝動をグッと堪えて飲み込む。


「そうですともっ!! しかし、そうなると水路と下水道を完成させるのに何年かかるやら……」

「それに関しては心配する必要は無い。俺が魔術で一気に掘り進めるからお前たちは領民から集めた日雇い労働者を纏めて俺がミスった個所、例えば石垣が上手く魔術で作れていなかった個所などの補修を行ってくれればいい」

「それならばかなり早く完成できそうですね……って、ルーカス様が魔術で水路と下水道を掘って行くなど、流石に無理では?」

「確かに、俺が魔術で一気に進める事に関しては疑問があるとは思うがこれで時間を消費する事の方が勿体ない。俺ができるかどうかは一週間後の工事着工日にその目で実際に見れば納得するだろう」


 そして何とか押し通す事ができたので後は使用人たちへ暇な領民へ日雇いの仕事があると声をかけてくる旨を言い渡してこの日の会議を終わらすのであった。





「ファング家の面汚しがいるぞっ!」「まったく、どの面下げてまだこの家にいるのかしら」「面汚しの出来損ないと同じ空気を吸いたくないよなっ!!」「まったくその通りだわ。こっちまで出来損ないが移ってしまうわっ!」


 あの日、私は魔物に襲われて右足を失ってからは実家で療養をしていたのだが、返って来た瞬間両親には罵倒されたあと父親から平手打ちを喰らい吹き飛ばされ、あれほど慕ってくれていた弟妹からは視界に入るだけでこうして見下されるような生活を送っていた。


 そして思う。


 この家にとって私という存在意義は何だったのだろうか?


 家族としてではなく、ファング家を彩るアクセサリーか何かであり、傷や汚れが付くと価値が下がる存在であったのだろうか? 


 いや家族の反応から見てもそうなのだろうが、私は未だにそれを受け入れる事ができなかった。 

 

 そんな中お父様に久しぶりに呼ばれたため、お父様がいる場所まで家の中を松葉杖を使い片足で歩いていると弟妹に見つかり、一気に気が滅入ってくる。


「入れ……」


 そして、いよいよお父様から『この家を出ていけ』と言われるのだろうと思いながらお父様がいる書斎の扉をノックし、返事を聞いてから入室する。


「喜べ。お前のような出来損ないを拾ってくれるもの好きがいたようだ。既に準備はしているから今すぐ、さっさとこの家を出てお前を娶ったもの好きの所へ行け」


 しかし、お父様の口から出た言葉は私の想像の斜め上の内容であった。

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