第12話 感極まっているオッサン
とりあえず町の周囲の水路によって守りを固める云々は下水道を作る次いでのような物で、あくまでも本命は下水道である。
「す、水路に下水道ですか……」
「あぁ、そうだ。これからタリム領を帝国一住みやすい街を目指して行くのだが、それにあたって噂を聞きつけた平民たちがやってきて定住する率も増えていくだろう?」
「はぁ……」
そこまで言ってもセバス達含めた使用人たちはピンと来ていないようなのだが、この世界ではまだ下水道は主流ではない為その反応になるのも仕方がないだろう。
なので、もう少し分かりやすく噛み砕いて説明する事にする。
穴を掘ったり水路を掘ったりするのは俺の魔術で一気にやるとしてもその他細々とした部分に関しては使用人と手の空いている領民にやってもらおうと思っているため、こういう大規模な事業を進めるにあたり現場を指示する者たちが何故作るのかという事を理解できているのとそうでないとでは後の仕上がり具合に影響が出てくるだろう。
特に街にとってかなり重要な機能となる為ここはしっかりと『なぜ下水道を作るのか』というのを伝えるべきだろう。
「そうなった時に注意しなければならないのが伝染病なのだが、起きてから対策するのは凡人がする対策だ。この俺ならばまず領民が増えると分かっているのならば下水道を作って伝染病が流行しにくい街に作り変える。その上で万が一伝染病が流行ったらその対処をすれば良いのだが、下水道がある街と無い街ではそこでも差がでるだろう。せっかく集めた金づるに死なれては元も子もないからな。いわばこれは先行投資である」
そこまで説明してやると、セバス含めた使用人たちは何故か目に涙を浮かべており、中には既に泣いているものまで出てきているではないか。
そんな泣かれるような事を言った覚えはないので、ちょっと引いてしまう。
「ルーカス様っ!!」
「どうしたセバス……? そんな感極まった表情で……」
そんな事を思っているとセバスが涙を流しながら俺の所まで近づいて来たかと思うと、俺の手を両の手で握ってくるではないか。
その様はまるで推しのアイドルの握手会に来ることができて感極まっているオッサンのようですこし気持ち悪いので、抑えて欲しいものである。
でもまぁ、こうして目に見える形で好感度が上がっている事が把握できるのは良い事であろう。
「も、申し訳ございません……っ。しかしこのセバス、何故私はランゲージ家に仕えているのかと幾度となく考えた事があるのですが、きっとルーカス様に仕える為だったのだと今では確信をもって言えますっ!!」
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