第11話 問題ないと思いたい


 そこまで一気に言うと、ルーカス様はテーブルに置かれている冷めたお茶を一口飲むと、また話始める。


「ではどうすれば良いか、そんな事は決まっている。他の領地よりも良い条件で住める領地にすればいい。そうすれば勝手に領民は増え、それに伴って我が領地民から回収できる税金の額も増えるという事だ。両親みたいにお金が無いからと金策の為に頭を回転させ常に金の事を考える生活など馬鹿らしい。俺は馬鹿な領民を煽てて勝手に俺の懐に入ってくる金額が増える方法の方が楽だと思ったまでで、あくまでも俺の私利私欲の為でしかない」


 そう語るルーカス様なのだがその目は優しさに満ちている事を私は見逃さなかった。


 それにもしこれがルーカス様の本心であったとしても、領民が住みやすい領地にするという内容は変わらない為、私はルーカス様の為に全力でサポートしただろう。




 

 両親が死んだ事によりやる事が山積みでまったく学園へと帰れる見込みが立たないので、学園へはそのまま退学も考えている旨の手紙を送った。


 まぁ、忙しいのは本当だが、領地経営等はセバスに任せればいいので学園の退学云々はそれを言い訳に使っただけではある。


 しかしながらこれで主要キャラがいる学園から離れる事ができるのならば安いものだろう。


 嘘は言っていない(使用人に任せれば学園へと戻れる事を隠しているだけ)ので、問題ないと思いたい。


 それはそうと、何故かセバスを筆頭に使用人たちが俺の両親に仕えている時よりもやる気に満ち溢れているのは気のせいだろうか? そもそも常に空気が淀んでいたこの家が、何故か明くなっている気がするのだから気のせいではないだろう。


 もしそれが、少し前に俺が提案した領地経営についての内容によるものだとしたら、使用人から殺されるという死亡フラグはブチ折ったと思って良いのだろうか?


 思わず希望的観測からそう思いたくなるのだが、賭けているのは俺の命である為安易にそう結論付けるのは危険と言えよう。


 ここはやはり『まだ死亡フラグは折れていない』と考えて慎重に動くべきだと俺は再度気を引き締める。


 そんな事を思いながら俺はこの領地へ戻って来てから何度目かの会議室へと入り、集まってくれた使用人たちに向かって適当に挨拶をすると、これからここタリム領を更に発展させるべく俺が考えた案を話していく。


「という訳で、西側を流れている川から水路を引いてきたいと思っている。理由としてはまず下水道を作り衛生面を確保したいのと、街の周辺に水路を作り守りも固めていきたいからだ。ちなみに下水道の先にはスライムを大量にぶち込んで汚物を処理させる施設も作る予定だ。異論はあるか?」

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