第8話 クズな両親の間に産まれたドラ息子


 しかしながら使用人たちが俺に向けてくる視線からは『このドラ息子がまたおかしな事を言い始めるんだろう? それに振り回される俺たちや領民の事なんて何一つ考えていないクズだな』という感情がダイレクトに伝わってくるので、俺が家督を継いだ家である筈なのにめちゃくちゃ居心地が悪くてゲロ吐きそうになってくる。


 いやまぁ使用人たちの思わんとする事は今までの両親の行いや、俺の普段からの行動や言動を考えればそう思われても仕方がないと言えばそれまでなのだが、それでもこうも大勢から嫌っている事を隠そうともしていない視線を向けられる経験は前世でも無かった為、思わず怯みそうになってしまう。


 だからといってここで怯んでしまい、何も言いたいことも言えないまま終ってしまい領地経営で変えるべき個所も変える事ができず終わってしまう方が嫌だと思った為、ここは勇気を振り絞って言いたいことを言う事にする。


 まぁ、ここで何も言えなければこれから先何も言えないという訳で、それはそれで死亡フラグが立ってしまう可能性がある為どの道ここで何もしないという選択肢は無いのだが。


「他に仕事もある人もいただろうが、急な呼び出しに応じ、集まってくれたことをまず感謝する」


 俺の我が儘によって急遽集まる事になったので、とりあえず初手謝罪から入る俺なのだが、俺が謝罪の言葉を口にしたところでざわめき始め、頭を下げた瞬間に驚愕しているのか先ほどまでざわめいていた会議室が一気に静かになる。


「では、静かになったところでまず俺からの提案なのだが、このバカげた税率を下げようと思っている。なんなら他の領地の平均でもまだまだ高いと思っているので一気にこの額まで下げていきたいのだが、急に下げてしまうと色々と問題もあるだろうからひとまずは他の領地と同じくらいの税率へと下げたいのだがどうだろうか?」


 そう俺が提案すると、みんな鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしながら俺の方を見ているではないか。


 いやまぁ確かにクズな両親の間に産まれたドラ息子から『税率を下げたい』などという言葉を聞いたら俺だって使用人たちと同じような表情をしてしまうだろう。


「ルーカス様……失礼な事を聞く事をお許しください」

「かまわん。どうした?」

「ありがとうございます。ルーカス様、先ほど申しました税金の引き下げを考えているというのは本気なのでしょうか?」


 そんな中ゼバスが使用人を代表して先ほど俺が提案した税率を下げるというのは本当かと確認してくるではないか。

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