第6話 やっと死んでくれた


「何だ?」

「ま、まだ確定事項ではないのだが……お前の両親が馬車で移動している所を賊に襲われて死亡してしまったという情報が届いている……っ。先ほども申した通りまだ確定事項ではないが一応ルーカスは領地へと戻るようにとの事だ」

「…………そうか、分かった」


 担任である男性教師の説明を聞き『やはりそうなったか』と思い、以前から考えていたスローライフ計画の進める為に今とる最善の行動を一瞬だけ考えていたせいで俺の返事が遅れてしまったのだが、その一瞬の沈黙を担任教師は『俺がショックを受けてしまっている』と受け取ったようで何とも言えない表情をしていた。


 ここで担任の勘違いである事を説明しても良いのだが、誤解を解くよりも心配されていた方が心象的にはそちらの方が良いと判断した俺は訂正することなくそのまま『両親が亡くなったかもしれず不安になっている青年』を演じつつ担任から、これからどのように領地へと向かうのかという説明を聞き終え自室へと戻る。


 ちなみに担任曰く、明日の早朝にて学園が用意した馬車で帰るとの事なので、さっそく帰路の準備をし始める。


 正直言って両親に関しては死んで当然の事を行ってきたので何とも思わないし、むしろやっと死んでくれたかというくらいの感情しかわかない。


 なんなら退屈でもあり俺を将来殺すかもしれない人達との生活はストレスでもあったので、これでそいつらが居る学園をどれほど離れる形になるのかは分からないのだが距離を置くことができたので『死んでくれてありがとう』とさえ思ってしまう。


 しかしながら両親に向けられている領民のヘイトは当然俺にも向けられているであろうことは容易に想像ができる為、両親が死んだから安心とは思わずに、いつ命を狙われてもおかしくないと思いながら生活していく必要はあるだろう。


 それでもゲーム上のストーリーでは両親と同等またはそれ以上の酷い領地経営を行って尚主要キャラクターに殺されるまでは生きていたのでそこまで気を遣う必要は無いのかもしれないのだがそれはあくまでもゲームの話であり、既に俺自身がゲームとは異なる行動をしている為それがどう未来に影響してくるのか未知数である以上警戒をしていて損は無いだろう。


 そんな領地でも学園よりかはマシだと思うのだから、いかに主要キャラたちから受けるストレスが大きいのか分かるというものである。


 ちなみに主要キャラの一人である狼の獣人ドゥーナは、負けイベントによって片足を失ってからはまだ学園に復帰していない。


 もし復帰していたら俺は『助けられたかもしれない』という自責の念にも駆られてしまい頭が禿げてしまうところだっただろう。

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